悪力?剛力! 第72期A級1回戦▲久保利明vs△佐藤康光

いやー佐藤康光すげえ。なんというか悪力というか剛力というか寧ろ剛力彩芽です!

まあ破壊力でいえばある意味剛力彩芽もなかなかですが…(ちなみに私は彼女のことを可愛いと思います。昔で言う…なんでしょうね?うしろの百太郎みたいで。

久しぶりにA級で久保利明の将棋が見れる。それだけで嬉しくなりますね。主に居飛車目線ですが、最強の振り飛車党を迎え撃つ、最強の居飛車軍という感じです。

久保利明ファンとしてはたまったもんじゃないと思いますが、見ててやはり1局ぐらいは純正振り飛車党がいたほうが楽しいですよね。

戦型は先手で端歩を突いたことによるゴキゲン中飛車に。後手の佐藤康光がいわゆる超速的な作戦を取る。個人的にはこの先手の作戦は寧ろありがたい気がする。端歩は居飛車の税金という言葉があるが、こっちがわの歩、玉側ではない端歩の価値というのは、やはり相対的に低いと思う。

久保の真意は定かではないが、左銀を超速に対抗する形で66に据えるのではなく、45までするすると出て行って玉頭銀のような展開を目指したように見えた。

しかしそれに対する後手の佐藤康光の応手がぶっ飛んだものだった。僅か24手目にして飛車先を突き捨てた。これは開戦の合図だ。次は普通の人間であれば、△7五歩からの飛車先突破だろう。

佐藤康光は違った。

飛車先を突き捨ててから、△5四歩。先手は中飛車である。歩が5五の地点にあり、位をとっている。どこかの時点で先手から▲5四歩と開戦するべきところだ。

それを突き上げた。いわゆる自玉の頭の歩を突く行為を地獄突きと呼んだりもするが、それに近い味わいがある一手。この一手をリアルタイムで見れただけでも、今月の五〇〇円の価値はあったように思う。

この手に対して、久保利明は棋士人生で一番の長考に入った。久しぶりのA級、準備した作戦。それが総て水の泡となる佐藤康光の踏み込みだった。

この手順の意味は、シンプルには先手の端歩を甘くする、というのがまずある。すぐに決戦してしまう。端歩を突いて、自陣の備えを犠牲にして銀を繰り出した先手に対して一気に決戦に持ち込もうということだ。

後手の陣形も良くないが通常一路振り飛車より戦場に近いところに玉を置いて戦う居飛車急戦を思えば本譜は割に合う条件だ。

何よりも先手玉がまだ一歩しか動いていないのだから。

もし端歩を突かなければこういう中飛車にはならないところなので微妙だが、同様に進んでいたとしたら玉の位置が四筋ではなく三筋にいたわけで、それと比較するとかなり先手の条件が悪くなっている。

この地獄突きの局面では微差だとは思うが後手が良いと思う。長考に沈んだ久保利明だったが、ここでは同銀しかなかった。

瞬間的だろうが、捌きのアーティストの駒達が一気に重くなった瞬間でもある。そういう意味でもこの佐藤康光の奇手は成功していると言える。

三六手目にどーんと△5三金と金銀交換を強要して、ついに前述の手の成立が確定した。あくまで積極的に必然の順を選択のしようがない道を強制する。

一瞬、捌きのアーティストっぽい手順が出るのだが、角銀交換の駒損で、いつもは捌けている久保の左翼の桂馬と香車は残っている。そして44手目に銀の押し売りが出て取れないようではやはり先手が辛いように思う。(取ると角を打たれて飛車金取り)。

48手目に△8八角と佐藤康光が打った時にまた久保利明が長考したように記憶しているが私は軽く▲6六金を第一感で読んだ。ただし、強い人はこういうところでしっかり指すもので、寧ろ▲8七金も考えたぐらいだ、という感想戦のコメントには驚いた。

先手が気を取り直して玉を二筋まで逃し、後手も玉の備えをしてから攻撃再開したのが62手目の△7三桂。このへんでは後手の角が劣化銀と化しているが、馬も手厚いので私は後手を持ちたいと思う。

ただし金銀の物量が先手の強みで、もし仮に戦果なく後手の馬が消えるようなことがあれば途端に後手が苦しくなる気もする。その程度の優位だろう。プロ将棋らしいバランスのとれ方だ。

ただ後手番で局面をつくりに行って微差とはいえ有利というのは精神的には良いものだと思う。

後手の桂馬の活躍が確定した66手目の△5六歩は勝利打点の味。乱打戦のような序盤から膠着した中盤で入った貴重な追加点、という印象の一着だ。実利をもたらす分かりやすい手。

その後飛車は取り合ったが、先手の唯一の主張だった金銀の物量が活きない展開となり、ほどなく佐藤康光が勝利を収めた。

手数としては100手程度の短い将棋だったが、序盤からの緩みのないやり取りで、非常に長く緊迫した局面が続いたので130手ぐらいの将棋のような充実感をもたらしてくれた。

やはり佐藤康光の将棋は面白い!剛力彩芽






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