読んで損なし 勝負師(内藤國雄・米長邦雄)

これは面白かった。7月に借りぐらしのリエコッティを見て、何故矢内理絵子さんが穴熊を指さないのか知り(当然だと思った。ああであれば私も穴熊は指さない)、ついでに立ち寄ったブックオフ(街にでると基本的にブックオフにより、将棋本を救出?するのが私の趣味)で入手したのが「勝負師 (朝日選書)」だった。105円ナリ。

正直、定跡本を探していたのだが全くなく、105円ゾーンで調べるとこの本があった次第。丁度私が将棋を指していない頃に出版されていたものだったので、出ていることすら知らなかった。

相変わらずの米長節に辟易する(オヤジギャグというのはボディーブローのように効いてくるのでたまに聴くのはいいが、続くとしんどい)かもしれませんが、それを除けばかなりの良書です。

米長先生の際どい発言「●●で」に内藤先生が「●●!(笑)」と単語で返すあたり、かなり頭の中で再現される雰囲気が出ています。

兎に角面白いのが、昔の将棋指しのエピソードだろう。有名どころでは関根名人から始まる名人達に関するもの、羽生世代について、等。

あまりネタバレしたくないのだが、一つだけ引用させていただく。173ページより。

米長 研究ってやつはね、それがモノを言うときと、そうでないときとが、繰り返し来るような気がするんです。その波をそれぞれ越えていくことが非常に大事でね。

 たしかに、研究会はだんだんと盛んになってきているけれど、では、なんのために研究会をするかっていうと、結局、ひと言で極論すれば、「将棋は先手必勝だ」という結論を出そう、ということなんですよ。

 あるとき、先手の勝率が上がってきた時にぼくは、「いまはそうでもごく近いうちに後手が巻き返して、ほとんど勝率が同率近くまで来る」と言ったんです。そうしたら「いや、そうじゃない、先手の勝率は六割まで行く」と若い棋士たちが言うんですよ。今から15年くらい前の話です。

ぼくは、「諸君の将棋に対する感覚は間違っている」「まだ、おまえたちはダメだ」と言ってね、羽生とか佐藤康光とか、丸山とか、いまやタイトルをみんな持っていった連中に、「おまえたちはまだ将棋が弱いから、そんなことを言っているんだ!」と言ってやった(笑)。



どうでしょうか?米長流の茶目っ気がありつつも、一昨年の後手の巻き返し、揺り戻しがあった今みてみると何とも味わい深いと思いませんか?

それ以外にも教育に将棋を取り入れる、という話をしっかり有言実行されている点など米長邦雄という男の良さが出ています。

少し逸れますが米長邦雄会長については色々と評価がわかれるところがあると思いますが、世の経営者というのは大抵がああいう具合で、聖人君子で務まるようなポジションではないと私は考えます。清濁併せ呑む、という言葉がありますが、まさにそういうところが必要。

マズローのなんとやら、ではないですが、最後に名誉を取りに行っているところはあるかもしれませんし、元々がリーダーシップを取りたい、権力志向のある人なのだとは思いますが、経営者というのはまさにそういう指向性の人がなるようなもの(でした。今はちょっと違う会社も出てきていますが)。

財界などに働きかける力でいえば、大山康晴名人はやはり偉大でした。今の棋界においてはでは誰だろう?と考えたときに、米長邦雄会長以外に適任者がいるかというと、良くも悪くもいないような気がします。将棋の天才集団ではありますが、世俗に知悉した人が多いかといえば恐らくはそうではなく、経営的観点では人材キラ星の如く、というわけではないのです。

ネット時代への対応、女流問題、コンピュータ将棋禁止令、教育への取り込み、そして公益法人制度改革対応。色々意見はあろうかと思いますが、並行世界を覗けない以上、今の現状で評価するしかないわけですが、私は苦しい将棋ながら粘っている、泥沼流が出ていると思います。


二人の対談集なので当然、内藤先生についても興味深い話が多いですがそれは読んでみてご確認ください。



商品の説明
出版社/著者からの内容紹介
東の米長、西の内藤、将棋界に2人のクニオあり――棋界内外での幅広い活躍、無類の人気と多才ぶりを誇る棋界の重鎮初の対談録。勝負の世界の今昔、希代の棋士たちの盤外戦術から、互いの人生観、モテ方のコツまでを縦横無尽に語り合う。才能と努力・運の関係、「勝負に辛い」先輩棋士の思い出、ファンを魅了した名対局の裏話、「大器」の見分け方、60歳を越えてどう生きるか、将棋の普及と棋界の展望……独特のユーモアと「勝負師」としての素顔がのぞく、吟醸のエピソードと本音が満載の1冊です。
内容(「BOOK」データベースより)
棋界内外での幅広い活躍、無類の人気と多才ぶりを誇る東西「2人のクニオ」の初の対談録。勝負の世界の今昔、希代の棋士たちの盤外戦術から、互いの人生観、モテ方のコツまでを縦横無尽に語り合う。才能と努力・運の関係、「勝負に辛い」先輩棋士の思い出、ファンを魅了した各対局の裏話、「大器」の見分け方、60歳を越えてどう生きるか、将棋の普及と棋界の展望…独特のユーモアと「勝負師」としての素顔がのぞく、吟醸のエピソードが満載。


目次
1 ふたりのクニオ
2 師匠として、弟子として
3 愛すべき棋士たち
4 棋界あれこれ
5 同じ空気を持つ者たち
6 勝負師の引退



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マーケットプレイスの古本であれば70円台+送料350円で入手できるみたいですね。

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Tag : 将棋 内藤國雄 米長邦雄 大山康晴 佐藤康光 矢内理絵子