コンピューター将棋の実力はプロ棋士レーティングで1600-1800?

さて電王戦の楽しい日々も来週で終わりかと思うと、それ以降の土曜日はどうやって生きていけばいいのか?というのを真剣に悩んでいる今日このごろです。願わくばニコ生の企画者様には毎週1番組は最低でも将棋関連の番組をお願いしたいところです。人狼でもいいです。毎日人狼でもいいですよ。。

感傷的ムードの先週の土曜日、伊藤英紀開発者のプエラαvs塚田泰明九段でしたが、今日は少し冷静に残酷に、そしてシニカルなアプローチで迫りたいと思います。

まあ私も大人なのでああいう感動している雰囲気で水を差すようなことは言わないわけです。伊藤英紀さんとは違って。というとちょっと煽りすぎなので少し言葉を柔らかく書くと、本当に感動しました。これは事実。ただその一方で入玉将棋になった瞬間、離脱している自分もいるわけですね。

そのタイミングでTwitterにも書いたのですが、あの入玉を決意した瞬間というのはそれ以外の方針では負けが決まっていました。負けないためには、死なないためにはあの作戦しかなかった。そして人間同士の対戦であればあの入玉で後手が勝つ可能性というのは99%、100%無いわけです。先手が心臓発作で倒れるとかそういうレベルでしか起こり得ないぐらいの逆転劇でした。

よって、私はあの入玉の決意をみて「ここから仮に塚田泰明九段が逆転したとしても、将棋としてはもう終わっているわけで、コンピューター将棋の入玉の弱点を突いたということに他ならないので、将棋としての見所はない」と思い、呟き、近所の行きつけの飲み屋に向かいました。

その後の感動はみなさんご存知の通りです。私がほろ酔い加減で戻ってくると将棋は逆転していました。逆転ではないですが、必敗の将棋が引き分けになっていました。

昨晩、ニコ生のタイムシフト視聴で見逃した部分を早送りしながらみていたのですが、木村一基プロと安食総子女流の組み合わせで良かったなと思いました。将棋としては解説する部分がない状態での数時間を、面白く飽きさせることなく上手く盛り上げていました。実際、会場のニコファーレからは一手プエラαが手を指す度に笑いが起こるという状況でした。

将棋が引き分けになった局面での絵面はとてもシュールでした。棋士と開発者がお互いに点数を数える姿。こういう持将棋特有の姿が世の中に出ただけでも、この対局の価値はあったと思います。ヤフーのトレンドワードにも、入玉という言葉と持将棋というのがランクインしていたそうですから。

ここで将棋に詳しくない方のために少し書くと入玉と書いて「いりたま」と呼びます。ちょうどスクランブルエッグの和訳と同じイントネーションですね。そして持将棋というのは「もちしょうぎ」と呼びます。「も」と「ち」の間には小さい「っ」を入れて読むと通っぽいので是非いれて読んでください。

「いやー土曜日の電王戦観ました?まさか『いりたま』で『もっちしょうぎ』になるとは思いませんでしたねー」と職場の同僚に話しかければ、今日の話題は尽きることは無いでしょう。

(ちなみに念のために書きますが本当の読み方は当然ながら「にゅうぎょく」と「じしょうぎ」です)。

で、プロとコンピューター将棋が公式の場で戦うことがなかった今までは色々と憶測が入り乱れる状況でしたが、今回のこの第二回電王戦の第四戦までの戦いである程度コンピューター将棋の実力が分かったと考えています。

プロ棋士が入玉形を目指すと、ほぼプロ棋士の必勝。相居飛車、特に矢倉を無理やり矢倉風味に目指せば、コンピューター将棋は飛車先交換をしてこないので、入玉成功する可能性が割りと高そうである、というのは初戦の阿部光瑠戦、今回の塚田泰明戦で分かったところです。

ここをプロ棋士が狙うとつまらなくなる、というのは当然理解できるところですが、この辺りの議論は避けたいと思います。

ではプロ棋士がそういう展開を敢えて選ばずに、人間同士のように戦った場合のコンピューター将棋の棋力は?というところでいうと、タイトルの「棋士レーティングで1600-1800ぐらい」だと私は思います。将棋倶楽部24でいうと、3200-3600点ということになります。(ざっくり将棋倶楽部24での点数の半分が棋士レーティングという図式を私は置いてます)。

ここで大平武洋プロのブログからコンピューター将棋の実力についての記事を引用します。やや長いので適当にサマライズ&補足しますね。


・ソフトの序盤の穴というか作戦が大平武洋プロの想像以下(酷すぎる)。
・自分はタイトルホルダーやA級棋士に勝てると思えないけどソフトならチャンスがあるのでは?
・『和服で対局するとマイナス30分。初めてなら1時間』と先輩棋士に聞いたことがある。(佐藤慎一・船江恒平の負けについても多少は影響あっただろう、ということですね)。
・普段の公式戦にソフトが出て来たら最初は分からないけど一周した辺りから対策も万全になって勝てなくなるのではないだろうか?それくらい序盤の出遅れが大きい
・ただ、相手に追随していく指し方をされたらトップでも厳しい状況になるのはそんなに遠くないか。

http://ameblo.jp/takehiro511/entry-11510309849.html



こんな感じですね。特にプロ棋士にかぎらずですが、プロの世界でよく言われることが「最初は分からないけど一周した辺りから対策も万全になって勝てなくなるのではないだろうか?」というフレーズですね。野球などでは特にあると思うのですが。

個人的には私のような一介の、野良の、野生のアマから見ても、コンピューター将棋の序盤は酷いです。ただし、そういう意味でいうと、人間の中終盤も実は我々が分からなすぎて気づいていないだけで、実はプロの中終盤でもかなりの抜け漏れがあるのではないか。という気もしています。

人間は手順に意味を見出してしまうので先入観に基づかない想定外の手、というのを発見するのは難しいですが、コンピューター将棋の計算能力の前ではノーミスで終局まで持っていくのはもしかしたらとてもむずかしいことなのかもしれない。

最終局登場するのは三浦弘行プロで言わずと知れたA級棋士です。ケレン味のない将棋を見せてくれるはずですが、ノーミスで勝ちきれるかどうか。

佐藤慎一さんや船江恒平さんが負けたのはなれない和服、プレッシャーの掛かる大舞台による疲労というのも当然あったと思いますが、そういうのが無くても果たしてノーミスで指せたかというと人間にとっては難しいのかもしれません。

それこそ電卓やそろばん無しで大きな数字の素因数分解をしているようなものなのですから。

このへんの人間はコンピューター将棋相手に優勢を築いてからミスるかミスらないかというのはかなり大きな話になります。如何にコンピューター将棋の序盤がしょぼくても、人間が必ず1局のうちに何度かミスり、その都度コンピューター将棋が差を詰めてくる、いつかは逆転するのであれば、学術的な将棋の探求という意味では一ミリも電王戦は貢献しないものの、人間はコンピューター将棋には勝てない、ということになります。

ただ、佐藤慎一戦、船江恒平戦を観る限りだと、トップレベルの人間が出てくれば、或いは普段着の対戦で注目もゼロで相手が人間だったら、あの将棋を逆転されることはなかったかもしれないな、という気持ちも捨て切れないでいます。

大平武洋プロのような冷静な見方はプロ棋士であれば口に出さないかもしれませんが思って当然だと思います。ただ、その気持ちと技術、とくにミスらない技術が伴っている棋士というのは、ある程度トップクラスに限定される可能性があります。

結論もなくダラダラと書きましたが、電王戦の意義、みたいなものは将棋の真理追求には一切貢献しないので別の所で見出す必要がありそうです。個人的には、最近コンピューター将棋を見ていてそれを参考にした作戦を将棋ウォーズで投入しているのですがなかなかの成果が出ています。

人間にとってのトレーニングパートナー、ではないですが、指定局面からの解析作業、モンテカルロシミュレーションからの勝率判定、などで学術的な意味合いで活用するのが一番良いのだろうなと思いました。

実際、そういうアプローチで研究に取り組んでいる人が実はいるのではないか?という気がしています。特に渡辺明三冠の深い研究と局面の見切りにはそういう印象を強く持っています。(渡辺明三冠が使っている、という意味ではなく、似たような明快さを得られる。アドバンスト将棋が真理解明や定跡の発展に役立つという。)

コンピューター将棋開発者の皆さんには、そういう方向でのプロ棋士との連携・提携みたいなことも今後は考えて貰いたいなと思いました。

指定局面を打ち込むと数万局そこから試行される…というプログラムというか機能をもたせると、DNA解明のように将棋の真理追求に役立つのではないでしょうか。

最終戦の面白さへの期待がなくなったわけではないのですが、上記のような気持ちでややコンピューター将棋vs人間という取り組み自体への熱量はちょっと違った感じになってきている、というのが私の現状です。



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(2013/03/29)
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内容紹介
著者は「島研」を主宰し、羽生善治、森内俊之、佐藤康光という三人の名棋士の成長を十代の時からつぶさに見守ってきた。
著者は語る。「羽生善治という存在を中心として、佐藤康光・森内俊之の追いかけ、追いつきそして並走し、また抜きつ抜かれつの、長い戦いの中で見せる棋士の弱さや脆さを、みんなが鍛錬の中で身につけた全人的強さで克服していく過程こそが、私が長年圧巻の思いで見続けている物語なのである」。
トップクラスで戦い続ける三人の、長持ちする驚異的な技術と、それを支える精神構造の秘密がこの一冊に結実している。
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入玉 第25期竜王戦七番勝負 第3局 ▲丸山忠久-△渡辺明

明日対局。

第25期竜王戦七番勝負 第3局 ▲丸山忠久-△渡辺明

三連勝。渡辺明入玉で三連勝を決めた。

羽生善治vs森内俊之の名人戦の際に、私はこの勝負が今後の将棋界の戦型トレンド、後手番の在り方の定形を作るのではないか?と書いた。

実際には戦型トレンドとしては、序盤戦術の天才である藤井猛が振り飛車の新たな在り方を示し、居飛車党は二手目△8四歩が増えてきた。このへんは羽生・森内というよりは、渡辺明が果敢に先手番の矢倉、角換わり腰掛け銀に挑むことにより、勝率の下がった振り飛車よりは、という消去法もありつつ、という印象を受ける。

今回の竜王戦は丸山忠久という一時期角換わり腰掛け銀で無敵を誇った男と、その角換わり腰掛け銀を屠ることに命を掛けている、角換わり腰掛け銀は無理筋であるとまで言い切る男の、二度目のタイトル戦での戦いである。

前期は丸山忠久側にあまり良い所が見られなかったが、今期も渡辺明の良さばかりが目立っている。それにしてもあの丸山忠久に、A級に上がった後に二五連勝ぐらいした男に、順位戦でも無敵を誇っていたあの男に、ここまで圧倒的に勝てる棋士が、羽生善治以外に現れるとは、と思ってしまう。

そういう意味でも羽生善治の次の男は渡辺明なのだろうなと自然に考えるところだ。

第三局も丸山忠久先手で角換わり腰掛け銀となった。また渡辺明の待機作戦が出るのかと思ったが、今回は少し違った。とはいえ、渡辺明の角換わり腰掛け銀の後手番の考え方は大枠では、桂馬を跳ねないことで相手に攻めの手口を与えない、というところにあり、本局も同様だろう。

銀を△4二に引くのも将来の飛車交換を見据えつつ、2四の地点は脱出口として確保したい、或いは歩で桂馬を取り切る展開も見せるというところもあるかもしれない。

50手目の△6四歩はなんとも小憎らしい手だ。おとなしいとも消極的とも言えるが、攻めの糸口がないでしょう?という声が聞こえてきそうな手だ。

それに満足して四筋に転戦した丸山だったが、このあたりのやり取りの収支は後手にあるように思う。先手は飛車を何度も動かし、動かすために金を一段目に戻し、ということで手損が大きい。しかも後手に先に歩を持たれて、△3五歩でほぼと金が出来るのが確定的である。

先手としても手に乗って攻めるしかないが、飛車切りの決断がプロらしくも恐ろしい手。個人的にはこういう手で勝てる気がしないのだが、プロだとぎりぎり攻めがつながるのだろう。それに対する渡辺明竜王の応接は、あくまでもそれは無理でしょう?という受けの手。

本局は一貫した受けきり、入玉を目指す手が多かった。私は今後の後手番というのは千日手か入玉を目指す、チェスでいうところの引き分けを目指すような形が最善になっていくのではないか?という予想をしているのだが、本局はまさにそういう将棋だった。

また棋風的にも渡辺明は鋭い攻め将棋ではあるのだが、秘奥義としての受けの強さ、粘り腰、というのがあり、そのおかげで対羽生善治戦では、徳俵に小指が残ったというような勝ち方をしてきたのだった。最近は羽生善治がそのことに気づいたのか、真綿で締めるような勝ち方を目指すようになったように勝手にみている。

入玉を目指す将棋というのは、プロでも分かりにくいところがあるらしく、島朗プロや中原誠プロが上手であるという評判で、丸山忠久プロも昔は矢倉で入玉していくような将棋がよくあったように思うのだが、本局は渡辺明の入玉術が一枚上手だった。


入玉といえば、新井田基信氏の作品だったと思うが入玉大作戦という面白い書籍がある。私はカニカニ銀とか右玉とか高田流とか入玉大作戦とかそういうマニアックな戦法の本を集めるのが趣味で今も実家の書庫にあると思うのだが、今後はプロ将棋でもこういう将棋がどんどん楽しめるのかもしれない。(そういえば先日の郷田真隆プロも対深浦康市戦で、入玉から持将棋を目指していた)。

千日手の名手?の永瀬拓矢が勝ちまくっているということもあるし、先日の藤井猛vs松尾歩の二度の千日手からの藤井猛の勝利、などもあった。どんどん後手番の在り方がシビアになってきている、という事なのだと思う。


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「将棋観戦記」というブログで、プロ棋士の将棋を観戦して思ったことを記しています。棋力はありませんが、将棋観戦の楽しさを一人でも多くの人に知ってもらい、「観る将棋ファン」を増やすために貢献できればと思います。主に順位戦速報・タイトル戦等、ネット中継されている将棋を中心に将棋観戦記を書いています。棋譜・符号はなるべく用いずに、将棋のルールが分からない人でも、将棋の勝負の面白みが伝わるように努力します。

基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

将棋観戦中に書き始め、対局が終了すると思われるところから観戦記を完成させていることが多いです。文章内の形勢判断は個人的主観によるもので、観戦中の控え室のプロの意見を取り入れず、将棋ソフトの解析を行なっていないため、形勢判断が正しくない可能性があります。

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