ものすごく雑感(王座戦の森内中村太戦、竜王戦の井上行方戦等)

いつもが落書きだとすると、今回は落書きですらないぐらいのものになります。

昨日は携帯中継が四局ありました。女流プロのは正直まだ全然みてないです。今から見ます。中井先生の将棋は割りと居飛車党で切れ味鋭く、そして粘りも単なるクソ粘りじゃないので好きです。

今見たんですが、後手の香川さんが後手での石田流なんですね。これ、私がクソ戦法と呼んでるものなんですが…なんというか、将棋ウォーズで結構みませんか?3二飛戦法を封じたと思ったらこれですか…という。

私の対策との違いを見る意味では非常に勉強になりました。後手は無理筋なんだけど経験値の差で戦おうというもので、三分切れ負けということを考えると実践的ではあるのですが、なんというか志の低い作戦ではあります。まあもっと志の低いのが私の作戦なんですが。

たいてい相手が志の低い、といったらそれはやられるとちょっと嫌、ということの裏返しでもあるので、どんどんやりましょうw

本譜の展開をみると、かなり後手としては成功している。あとは自力で中井さんが勝つんでしょうけど、この馬作られた局面から居飛車が勝ち切るのは相当な自力が居飛車側にないと無理な気がします。ということで、また後手の無理やり石田流が継続的に流行るんでしょうな…。

本譜は中盤のちからのこもった応酬で先手がよくなりギリギリの局面で端一発、の勝利。


森内俊之名人と中村太地の対戦は相振り飛車に。序盤の駒組み、先手の陣形がかなり手厚くみえて私好みでしたが、後手の攻撃陣の配置が絶妙でそれを上回りました。先手の歩越し銀の守備陣が逆に悪形で途端に自信なくなりました。

それにしても中村太地の将棋は攻め将棋ですねえ。ほれぼれするほどの攻め将棋。鋭さというよりは勢いを感じる攻めで、無理攻めではないけれども、とにかく激しく攻め立てる。剣道の上段の構えからのメンメンメーン、ボクシングの猛ラッシュというような感じ。

例によって飛車の使い方がらしい感じでした。森内俊之名人といえば屈強な受けですが、その受けを突き破る激しい攻めでしたね。

正直太地くんってここまでトーナメントの上位に毎回来るんですね・・・と意外な気もするんですが、本譜を見る限りだと納得しました。

この攻め将棋を思うと居飛車党に転換して正解だったなーと。


さて、竜王戦の井上慶太vs行方尚史。今の完全に才能開花させて心技体が極まりまくっている行方尚史に最も得意と言ってもいい後手番矢倉、しかも矢倉得意の井上慶太先生、ということで注目してみました。

鑑賞点はなんといっても、行方尚史の受けの技術。まさにそれを堪能できる一局でした。今期の順位戦、行方尚史は相当走りそうな感じで、その理由の総てがここにあります。やはり今後手番で、奇をてらうことなく、普通に矢倉を指して普通に凌ぎきる、そしてそこから華麗に反撃できるプロというのは行方尚史がその代表だと思います。

ツイッターで、ここでは後手受けきりかな?と書いたところでは井上慶太先生もこれは投了か?ぐらいに思っていたようです。そこからも細く攻めますが、と金は作ったものの、そこからの反撃が厳しく、ほどなく後手の行方尚史プロが勝利。

冗談で嫁の勝利、行方は羽生に勝ってからいい女を抱くんじゃなくて順序が逆だったんや・・・とか、色々みんな(私を含めて)書いてますが、勿論その通り・・・かもしれませんが、シンプルに生活が整って精神が安定して、日々の勉強・努力があって元々あった実力が普通にコンスタントに発揮されるようになった、ということですね。

ま、シンプルには嫁のおかげ、でいいかと思いますw

今期はやはり復活した三浦弘行と、今時点では棋界最強だと思ってるなめちゃんを応援していきたいと思います。頑張れ、団塊ジュニア世代!



居飛穴本来の強さ 第4回大和証券杯女流最強戦▲里見香奈vs△中井広恵

決勝は三連覇を目指す中井広恵プロに、もはや女流の域にはとどまらない里見香奈プロが挑戦、という図。

戦型は角道をふさいでからの石田流、後手に組ませるだけ組ませて戦う方針をとった。

48手目、△4一金で後手の形はほぼ最善に。先手は端歩を突いていないので、この一手を指させずに等価交換ですすめることが出来れば、堅さの違いで居飛車がよくなるというイメージ。

正直、この形で中井広恵プロを相手にして勝ちきるのであれば、里見香奈プロは女流で指すのを止めて、いわゆる正会員としての、男性プロと互角の四段を目指したほうがいいと思う。

というのが観戦時の私のつぶやき。

65手目、▲7八歩という手があったが、私はこういう手がすごく嫌いだ。振り飛車党の常套手段かもしれないが、居飛車党としては、この歩は叩く歩であって、自陣に打つ歩ではない、という意識がある。対抗形では叩く形にならないにしても垂らす手はある。

振り飛車としてはある手だということは理解できるが。


81手目の局面は見た目通りに居飛車が勝ちやすいと思う。玉の広さという主張点がなく、横からの攻め合いにも近い美濃囲い、種駒が2枚ある居飛車、飛車の横利きが守りに効いている居飛穴。普通に必勝パターンだ。そこから悪くなってからの粘り腰、よくなってからの受け潰しという二種類の技をもつ里見香奈プロが力を出す。端玉から2八の地点に銀を埋めて串かつ囲いに。

終盤の寄せ合いは、やはり「羽生の終盤術」に出てくるような手筋を解説の羽生善治名人が指摘する。こういう普通の手筋で難しそうな終盤を簡単に寄せてしまうのが羽生の終盤術だ。

それを逃し、重く迫る中井広恵プロ。109手目の▲3九飛が強すぎるからこその失着だろう。▲9九飛の局面が相当にいけていない気がする。

まだそこからも振り飛車がよいかもしれない、と羽生善治名人が語った場面はあったが、結局は居飛車穴熊の遠さが生きた。

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普通に勝ちやすい、というのを中井広恵プロの居飛穴は示している。これで三連覇。里見香奈プロはまだ相振りと対居飛穴に弱点を抱えている、というのが私の印象だ。



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第四回大和証券杯女流最強戦 ▲中井広恵-△甲斐智美

清水市代女流が分が悪い以上、女流同士の取り組みにおいて、中井広恵プロだけが居飛車党としての頼みの綱、という状況。

女流棋士で最も自然に居飛穴を着こなす中井広恵プロだが、組ませない前提の戦型であるところのゴキゲン中飛車と石田流に対してはどうか。本局は甲斐智美女流が後手番となり、先手の中井広恵プロの作戦に注目した。

先手の中井広恵プロは▲3七銀戦法。この、プロが普通に使う戦法を普通に自然に指せる、というのが中井広恵プロの強みだ。銀の見合う形となり、持久戦を志向するのも自然な発想。

先手の持久戦志向をみて、相穴熊に構える展開もあるが、甲斐智美プロは軽く仕掛けた。先手玉の脇腹が涼しい間に仕掛けるというのも自然。このあたりのやりとりはプロらしく美しい、棋理に則った手順だと思う。

但し、振り飛車側から棒銀的にすすめる作戦は実は良くなりにくいと思う。お互いに玉側の端歩を突き合っていないことも、本譜の展開においては振り飛車側のほうがデメリットが大きい。

△6一金、△5一金と並んだ姿は私が振り飛車の姿で最も好むヒラメ。6三の垂れ歩が気になるものの、成銀が逸れたことで後手陣への脅威は多少緩和している。

59手目の局面、▲5五銀の局面ではアマ同士だと振り飛車が勝ちやすいように思う。受け将棋の私としては、勉強の意味でも先手を持ってみたい。

後手が飛車を切った辺りでは流石に先手が良いだろうか。その後は中井広恵プロが見事にまとめきった。

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中井広恵プロのこういった対振り飛車の活躍を見るほどに、他の女流トップ、具体的には清水市代プロや矢内理絵子プロの序盤作戦の損による対戦成績の分の悪さが歯がゆく思われる。

しかし居飛車党であれば分かってもらえると思うが、相居飛車と対抗型において得意不得意があるのはやはりその個性として存在するので仕方ないところではある。


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第四回 大和証券杯女流最強戦 ▲室田伊緒-△中井広恵

1月23日の日曜日の夜のひとときを楽しませてくれたこの対局。室田伊緒女流が四間飛車に構え、後手の中井広恵女流が居飛穴を目指す、という普通の展開。中井広恵プロは女流棋士のなかでもっとも居飛穴を自然に着こなす。

本局も序盤の陣立てとしては違和感が全くない。対する室田伊緒プロは(そういえばとちぎ将棋まつりで、筆を持つ立ち居振る舞いの美しさに見とれたことを思い出す。字も素晴らしいものだった)、立石流とは少し異なるが、90年代に流行ったような記憶がある形に。軽く軽く軽く行きたい形だ。

しかし将棋は46手目に馬が出来たところで終わったかもしれない。実戦的なアヤはその後もあるはずだが、振り飛車としての主張点があまりない、粘り甲斐のない展開になった。

以下に左側の駒とはいえ、ぼろっと香車を取られてその後に蓋をする展開で、早く動ける何か、がないのであれば辛いと思う。よくも悪くも45手目は7七歩しかなかったかもしれない。

72手目の△3四馬で実戦的にも負けのない形に。この両者の対局は確か前回の大和証券杯でも見たように記憶している。その時は室田伊緒プロが序盤から終盤までリードして、中井広恵プロの悪力で捲られた…という展開。

そういう終盤力の違いがあるので、やはり序盤でのリードがほしい。すると里見・甲斐ラインのような最新型の振り飛車が必要なのだろう。特に中井広恵プロのような居飛穴使いを相手にする場合は。



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創元社シリーズは多分三〇年ぐらいはこの形を維持していますよね。中の担当者とかはどういう風になっているのか少し気になります。

第四回大和証券杯女流最強戦 1回戦第1局 ▲岩根忍-△中井広恵

初戦からかなりの好カード。女流居飛車党では清水・中井・矢内の三強というのが現状であり、対する岩根は女流振り飛車党の先頭集団の一人。男性プロを破ったこともある実力者で確か以前は奨励会に在籍し、2級位まで行っていたような記憶がある。

戦型は先手のノーマル三間飛車に後手の中井女流が居飛穴を見せ、後手の居飛穴が完全型になる前に石田流に切り替えた。この戦い方は比較的アマではよくある、というかよくあったように思う。

7筋の歩の交換をし、先手の飛車が引いたところでじっと△7三歩がちょっと勿体無いような、しかし先手の▲7六飛型を争点にしようという意思のある・意味のある手だった。
この歩のもったいなさを知らしめたい先手だったが、じっくりしていると居飛穴を固められるので顔を立てるようだが、攻撃を継続する。備えられている7三の地点を狙う▲4六角。

そこからの数手は居飛穴満足かと思われたのだが、単純に竜を作った後手に対して、47手目5八金左とした局面では先手の陣形がこれぞ振り飛車、という美しいものであり、振り飛車らしく指していけば先手が磐石になるであろう可能性を感じる。

大山康晴名人であればここからどう指しただろうか、という言葉があるが、それを思い出す局面だ。

65手目の局面。後手の銀の撤退と5筋の屈服があり、そして居飛穴の最弱点の一つである△3四の歩がタダで取られている。後手は歩切れ。先手は歩得で手持ちの歩が三枚。玉の堅さは互角か、▲3四銀のおかげでやや先手のほうが堅い。こういう状況の下、後手の中井女流が指したのが△3二金。じっと我慢の一手。とはいえとにかく実戦的で、悪いところが全くない手だ。

続くところも同様の方針でひたすらに先手の攻撃を受け止める体勢を築く。こうなると振り飛車は辛い。棋理としては良いはずだが対穴熊で、藤井システム等のような完全な穴熊シフトからのタコ殴りならばいざ知らず、ちょっと緩めば途端に速度負けする可能性のある中で攻めを正しく続ける必要がある。

そして相手の攻めが実行される瞬間、(もう受けに有効手がないということもあるが)反撃するのが将棋のココロ。前回の大和証券杯でも相当負けの将棋を粘って逆転したものが幾つかあったように記憶している中井女流だが、悪くなってからの逆転の狙い方に百戦錬磨の味がある。

86手目の△5七桂への応手が先手の敗着。普通に同金で何でもなかった。手抜いて攻め合いにしたことにより、穴熊の顔が立って逆転。本当に呆気無く逆転してしまった。

観戦中、後手の銀が6四に後退し、5筋を5二歩と謝った辺りでは、私は「これは振り飛車に勝ってほしい戦いになった。ただし中井女流の居飛穴にこの程度の良さで勝てるのは、男性棋士クラスかもしれないが」というような趣旨のことを呟いた。

そしてまさしくそのような結果となってしまった。多分恐らく、中井女流の居飛穴にこの美濃で勝ちきれるのは、女流には殆ど居ないのだろう。

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先日、美容室で読んだNumberというスポーツ雑誌に、日本のFWにはどちらかと言えば背の低い選手が多い。そのため、日本のDFに長身の選手が育たないので、世界で戦う時に、長身FWがいる外国諸国との戦いで苦戦を強いられる、というような話を読んだ。

これを読んで私が思ったのは、女流将棋における居飛穴の不在だった。居飛車党による居飛穴の暴力がないために、ノーマル振り飛車党にまだ存在の余地を許している。

最近矢内理絵子女流が居飛穴を志向する機会が増えている。また、こういう中井女流の勝ち方をみて女流の居飛車党が更に居飛穴を用いるようになれば、女流将棋における勢力分布も変わる可能性がある。

特に男性プロの将棋においては既に振り飛車の流行のピークは過ぎ、先手石田流・後手ゴキゲン中飛車というローテで勝てているのはごく一部のスペシャリストに限られつつある。

女流においてもそろそろ居飛車党の巻き返しが望まれるところだが、この半歩流行が遅れた世界というのがまた続くという意味において、二本柱を多用する甲斐・里見の天下が続くのかもしれない。


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Author:将棋観戦
「将棋観戦記」というブログで、プロ棋士の将棋を観戦して思ったことを記しています。棋力はありませんが、将棋観戦の楽しさを一人でも多くの人に知ってもらい、「観る将棋ファン」を増やすために貢献できればと思います。主に順位戦速報・タイトル戦等、ネット中継されている将棋を中心に将棋観戦記を書いています。棋譜・符号はなるべく用いずに、将棋のルールが分からない人でも、将棋の勝負の面白みが伝わるように努力します。

基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

将棋観戦中に書き始め、対局が終了すると思われるところから観戦記を完成させていることが多いです。文章内の形勢判断は個人的主観によるもので、観戦中の控え室のプロの意見を取り入れず、将棋ソフトの解析を行なっていないため、形勢判断が正しくない可能性があります。

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