これ、面白かったですか? 電王戦リベンジマッチ 船江恒平五段 vs ツツカナ

あけましておめでとうございます。朝型過ぎて毎年除夜の鐘を聞けない私です…昨晩も子供よりも早く寝てしまいました…。

で、電王戦リベンジマッチ 船江恒平五段 vs ツツカナなんですが、いかがでしたでしょうか?

対コンピュータ将棋ということでいうと、勝つ時は圧勝、競り合うと負ける、というのは一つのパターンではあるんですが、この将棋は棋譜として見た時に面白かったのでしょうか。

もちろん、棋譜は双方対局者による共同作業の賜物なのでどちらが悪いという話ではないのですが、これがドワンゴ?ニワンゴ?なり、日本将棋連盟が目指している電王戦のあり方の方向性なのだとしたら、かなり詰まらないかもしれない…というのは正直いって思いました。

ここまで振り返ってみると、第一回の米長邦雄の新米長玉も、最近ぼちぼち明かされつつあるボンクラーズ伊藤氏によるエピソードを思うとすでにこの流れの萌芽というか、そういうものが見えているような気がします。

第二回の阿部光瑠戦、塚田泰明戦。前者は勝ちこそが意義という意味ではプロらしさを示してくれた阿部光瑠プロですが、模範演技のような感じで、後者は勝負としては感動したものの、将棋自体は私は途中で観るのをやめて飲みに行ってしまいました。

で、今回のリベンジマッチですが、あの△7四歩は開発者が意図的にセットしたものである、ということをすっかり私は忘れていました。そして設定そのままで勝負を行うということは、あれが残った状態で戦うということだったんですね…。

言わばかなり期待勝率が後手に条件の悪い状態での指定局面戦だったという。ここをすっかり忘れていたのでした。。

ただ、対局後のインタビューだと思うんですが、事前の練習では勝率五割とか、船江恒平プロが振り飛車にしようかと思っていた、という話について、いまいち理解してなかったのですが、つまりはそういうことだったのですね。。

空手の型の演技、みたいな催し物に今後はなっていく…可能性があるなあ、という気がひしひしとします。

もちろん、川上会長が言っていたハードを一定にして、ソフトの強さで競わせたいというのは意図としてはF1のレギュレーションのようなものなので理解出来るところ、としていたものですが、なんというか、その結果出てくる姿が、ソフトのバグではないにしろ、癖をつく指し方での勝利ということであれば、そしてそれを正当化するのであれば、このイベント自体のあり方としては、少し変わってくる気がします。

今になってボンクラーズの伊藤さんが当時のことを振り返りつつある理由もなんとなく分かるような気がしてきます。その当時から、まさか貸与でああいう指し方になるのであれば、貸さないほうが良かったという伊藤さんの発言があったような気がしますが、主催者側が興行面に重きをおいて、対局者が勝負にこだわる結果、必然的な方向性としてこういうものになってしまうのであれば、これはどうなんだろうと。

極論、うまく癖を捉えたら勝ち、ただし棋譜としての感動は人間同士、プロ同士のようなものはない。むしろ人間が負ける時にこそ、勝負の面白みや棋譜の素晴らしさが出てくる可能性があるという。

なんとなくこの姿はやはり古代コロシアムでの人間対猛獣の戦いに似ているような気がしますね…。

人間賛歌であり、大変な重圧のなかでこのオファーを受けて勝ち切った船江恒平プロの評価が下がることはもちろんないですし、私も人間を応援していたわけですが、この棋戦に関する気持ちとしてはなかなかに複雑なものがあるのも事実です。

人間が追い越される前に、同じぐらいの実力で競り合っている時に、普通の将棋で普通にぶつかり合って、その結果どちらが強いのか?という勝負が見たかった・観たい、という気持ちがとても強いですが、大会のルールがその実際の意図はさておき、そういう勝負から遠ざかる結果になっていることに、主催者側が目をつぶっているとは言わないものの、誰もが最善を尽くすと、結果遠ざかることは間違いないだろうな、というのを確信しました。

その時に、そういう枠組みを無視して「感動をありがとう!」といえるのか、白けてしまうのか?は良し悪しではなく、その人の人間性だったり考え方に依存するところはあるだろうなと。そしてどちらのリアクションが生じたとしても、それはそれぞれの捉え方であり、どちらの反応も否定されるべきものではないでしょう。

私個人としてはやはり後者になってしまうかなあ。しまいつつ、それでも塚田泰明の涙に感動する自分も居ることは居るんですけどね。なんとも煮え切らない複雑な気持ちです。。


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三浦孝介初段はこの電王戦で何を得る・得たのか?

三浦孝介初段。誰だかわかりますか?

将棋通、観る将棋ファン初段ぐらいだとこの名前をみて「ハイハイ、あの人ね」とピンとくるでしょう。

あんまり引っ張っても仕方ないので答えを書くと「第二回電王戦でコンピュータ将棋の代打ちならぬ代指しを全局務める・務めた奨励会員」です。

平成22年入会組のなかで出世頭、初段。年齢は15歳。加部道場の出身で、同道場からプロになった棋士としては、熊坂、阿部健がいますね。

この第二回電王戦の五局で己の棋士人生を賭けた戦いに挑む棋士たちに対峙した時間は、どのような効果を彼に及ぼすのでしょうか。

以前、よく言われたこととして「NHK杯で記録係を務めた奨励会員はプロになる」という伝説。確かになる人は多かったように思います。記録係がプロの対局を目の当たりにする機会というのは、記録係を務めれば当然あるわけですが、NHK杯というのは全国に放映されるということで当然一味違います。

そういう場を経験することで精神的に・人間的に一皮剥けるということなのかなと理解していました。

そういう意味では、この電王戦も似たような効果を彼に及ぼすのではないでしょうか。

彼がコンピュータ将棋の代わりに指している姿を見て、私は「ヒカルの碁」を思い出しました。ヒカルの碁は、主人公の進藤ヒカルに、平安時代の天才棋士・藤原佐為(ふじわらのさい?)が乗り移って囲碁を指す、神の一手を指す・・・ところから、ヒカル自身が成長して自分自身の力で戦うようになる・・というようなストーリだったと記憶しています(違ったらすいません)。

コンピュータ将棋が将棋を指し、それを盤面に再現する。手つきはすでにプロのそれと大差ありません。しっかりした所作で着手していきます。

そして再現しているだけのはずの三浦孝介初段の手つきに徐々に変化が現れるのです。そのあたりはぜひ、ニコ生視聴者で普段将棋を見ない、今回の電王戦ゆえに見ている・・・という方には注目していただきたいです。

プロ棋士は通常、対局中対戦者同士が会話することはありません。盤上でお互いの指す手で会話しているわけですが、そのときにニュアンスを加えるのが手つき、駒の置き方・打ちつけ方です。

三浦孝介初段があたかもコンピュータ将棋の感情を代弁するかのように、着手する様をぜひ感じていただきたいと思います。

この勝負の代理指しを務めることで三浦孝介初段はプロ棋士の真剣勝負に、誰よりも近いところにいるわけです。この経験を通じて彼が何を得たのか・得るのか。それについては師匠の島朗プロか、三浦孝介初段ご本人のコメントを聞いてみたい気がします。

もちろんまだ修行中の身ですから実現しないかもしれませんが、彼がいつかプロになった日に、必ず聞いてほしいところですね。その日がとても楽しみです。



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【追記有】将棋の常識が変わる?詰まし屋一閃?! 第二回電王戦、第3局▲船江恒平五段vs△ツツカナ

まさか船江恒平までが負けるとは思っていなかった。勝てるとしたら船江恒平阿部光瑠だけかもしれないと事前に思っていたのに…。プロが先手で、こういう将棋で、負ける。この現実をどのように受け止めれば良いのだろうか?

…ここまで書いてから、ツツカナが△6六銀というタダ捨ての手を指した。これは…水平線効果だ。

※追記 水平線効果についてのご指摘をたくさん頂きましたので補足を記しました。
コンピューター将棋における水平線効果とは?
言葉の定義の厳密性からそれているというご指摘もありましたが一連の手順とコンピューター将棋の読みが点であるということがよく出た局面だと思います。どうかこちらも御覧ください。

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序盤、やはりコンピューター将棋、ツツカナが不思議な手順を見せた。四手目△7四歩。これは袖飛車の作戦だ。…人間であれば。しかしそうならずに、不思議な力戦調になった。

第二局に続いて第三局の本譜も力戦調。第二局ほどの形勢の差はないが、早めに飛車先を交換することが出来て、先手が良さそうに見えた。

ここでTwitter上の呟きや、携帯中継にて興味深い発言があった。

コンピューター将棋は飛車先の歩の交換を重く見ない、というもの。これは確かにコンピューター将棋全般にいえることだ。

プロの将棋を元に機械学習しているのに、その結果プロのコンセンサスであるはずの飛車先の歩を切ることのメリットを見ていない、というのは興味深い。

人間の感覚では信じられないが、長期的にみると、何万局という試行回数の中で発見された勝ちやすさへの相関度合いとしては、マイナスになっている、ということなのだろうか。

だとすると、この現状をもってプロ棋士や指し将棋を嗜むものとしてはどういう考えを持つべきなのだろうか。確かに、アマチュアでは相手に飛車先を切らせて、それに対するカウンターを狙う作戦がいくつかある。有名な所では、鈴木英春さんのものがある。

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本譜は確かに飛車先の交換の得よりも攻めの銀の立ち遅れは気になった。ツツカナは飛車先交換をせずに早繰り銀で先攻することとなった。その時の先手の銀は▲4八の地点にあった。

コンピューター将棋らしい一着は中盤でも出る。42手目の△6六角。金の頭の上に置く手で人間だとあまり考えない手。しかしコンピューター将棋は角と金の価値を多くの局面においてそれほど差のあるものとして考えない。等価交換、とまでは行かないまでも攻めが続くのであれば、主導権を握れるのであれば、積極的に交換していく。

これも機械学習の結果、多くのコンピューター将棋が身につけた手段だ。バックギャモンでは、コンピューター解析が進んだ結果、人間の直感に反するものの確率的には正しいとされる定跡が確立されたという話がある。将棋においても、多数の対局を施行した結果、多くの局面で角と金の価値を同等にみるというコンピューター将棋のコンセンサスが、今後人間界においても常識化するのだろうか?

ただし、本局ではこの手を境に先手に形勢が傾いたように見えた。特に47手目の▲5四歩が気持ちの良い手でここでは船江恒平プロの攻めのターンとなっている。

ただ結果論だが、この先攻は居玉であることから既に玉形の差で勝ちにくい…ではないものの、少しの差で逆転する素地ができていたかもしれない。そして居玉での戦いになった理由は序盤の飛車先交換にあったのかもしれない。飛車先交換と角金交換。棋理としての正しさを深掘りしていくのではなく、数十万・数百万・数千万という施行回数の中で「勝つ確率」をゴールとした評価関数が導き出したもの。

一言で言えばコンピューター将棋が見出した「実戦的な指し手」ということなのだろうと思う。

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先手の船江恒平は飛車を得てその飛車で両取りを掛ける手まで指すことが出来る局面を築き上げる。後手ツツカナの玉は△2三の地点に引きずりだされている。これは二筋を切った効果だ。人間の常識である切るべき飛車先を切った効果。

流石に人間が良さそう、と思われたこの局面で反撃の火種としての△4四角、最善の応手といわれた▲4六飛。そこで解説の鈴木大介プロ推奨の△2二金が出る。

一目、居飛車党には指しにくい手なのだが、これが絶妙手で局面をスローダウンさせて先手陣が居玉であることを咎めにいく展開となった。

特に凄い手は△5五香。馬の利きを自ら止める手で人間には確実に盲点となる手だが先手を歩切れにさせて、手順で△8九馬と桂馬を取った手がまた金取りの先手。

ここで明らかに船江恒平プロは苦戦を意識しているような表情と長考。長考の末に指したのが▲8八金打ち。ツツカナが指した△2二金と呼応したような受けの手だった。

ツツカナは先手玉を寄せにいけると判断して、馬で7八の金を取り、6六桂と詰めろ金取りを掛ける。このへんでは人間がいつ負けるか・・・という雰囲気にニコ生もなっていたように思う。

しかし、先手の船江恒平にだけ見えている反撃手があった。それが87手目の▲5五龍。意表の好手とみえた香車を取った手がなんと詰めろ。

ここからのツツカナの手順がやや不可解だったが、どうやらこの▲5五龍の詰めろに対して、水平線効果が出ていたようだ。水平線効果には二種類あって、不利な局面で指す手がないときに無意味な手を指すケース。今回起きたのは、一時的な優勢さと水面下の長手数の詰めろのせめぎ合いが起こっていたのではないか。

94手目の△6六銀は明らかにオカシイ手で、持ち時間で一時間以上大差を付けられていた船江恒平プロが蘇った瞬間だった。ソフトは終盤が強い、だから時間を残して終盤を迎えねば…という話もあったがギリギリまで読んで打った根性の▲8八金が実った瞬間だった。

97手目の▲6八龍が気持ちの良い手でほぼ勝利宣言に近い一着。


とはいえ、ツツカナの持ち時間は一時間、対する船江恒平は二〇分を切っている。斬り合いに持ち込むと危険…ということで安全に陣地を広げるような指し手に方針転換して最終盤を迎える。

一撃で決めるような局面ではない。時間が双方なくなっていく。ここからミスをしたほうが負ける。基本的にはコンピューター将棋はミスをしないとすれば、船江恒平プロがミスをするかどうか?の勝負。

対戦前の抱負として、「コンピューター将棋は自分を映し出す鏡のようなものである」と語っていた船江恒平プロ。まさにそういう状況が一九時を過ぎた時点で訪れている。

持ち時間はツツカナ49分、船江恒平14分。ツツカナの考慮中にこまめに席を立つ船江恒平。

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コンピューター将棋はターミネーターのようなものである。というのは私は三年ぐらいまえに書いている。三年前のコンピューター将棋選手権の感想「#csalive ターミネーター製造工場の視察 ?第20回世界コンピュータ将棋選手権を3日間眺めての感想?」に記している。

コンピューター将棋は人間とは異なる。どんな形勢でもそのマシンのスペックを最大限に発揮して最善の粘りをする。本譜もまさにそういう展開となる。

そのスローダウンしたねじり合いにおいて、ツツカナが一歩抜きん出る。船江恒平がスローダウンさせた展開でやや甘い手が出た。徹底的に自陣を補強せずに敵陣に龍を放ったところで局面がもつれはじめる。

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結論だけ書くと、ここからのねじり合いで船江恒平はツツカナに負けた。しかし見ていて私は本当に感動した。人間が全身全霊を傾けて戦っている姿がやはり美しかったです。

惜しい将棋だった。7二竜と入って7一歩と打たれたところから流れがおかしくなったが、本当に大熱戦だった。

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以下、対局後にすぐ行われた大崎善生さんからの簡単な質問。(の簡単なメモ)。

大崎善生「対局後の感想を。」

船江恒平「残念です」

大崎善生「良い局面もあったと思いますがいかがですか?」

船江恒平「弱さが出てしまった」

大崎善生「終盤はちょっと足りない?」

船江恒平「そうですね。ちょっと足りなかった」

大崎善生「控え室では2五桂が酷かったと」

船江恒平「そうですね」

大崎善生「序盤の5八金が早かったが?」

船江恒平「想定外だったが、指したことがあったので。悩んでも仕方ないかなと」

大崎善生「コンピューター用の作戦は?」

船江恒平「普通にさしてました。」

大崎善生「非常にうまくいっていたようにみえたが」

船江恒平「難しい局面もあったと思ったが」

大崎善生「△6六銀というのは?」

船江恒平「あれはびっくりしました」

大崎善生「コンピューター将棋と指してる印象はあった?人間とさしてる印象は?」

船江恒平「中盤は普通だったが、終盤はいかにもらしい感じだった」

大崎善生「一丸さんは?」

一丸貴則「結果的にはかったが勝った気がしない。勝ったが、船江恒平さんが優勢な局面もあったので釈然としない。秒読みによるものも大きいと思う。六〇手ぐらいまではずっと互角だった」

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記者会見がここから。


一丸貴則「(現在のお気持ちは?)そうですね、まだ実感は湧いてこないんですが、この電王戦に至るまでの船江五段の姿勢とか一貫した言動を鑑みるに今回の将棋の価値というのはとても高いものだと思っています。その価値を将来感じることが出来るようになればいいなと思っています」

船江恒平「(感想は?)そうですね、えー負けてしまったのは残念というか。まあ自分の弱いところが出てしまったなと思っています。(長時間の対局でしたが・?)優勢な局面も悪い局面も難しい局面も、かなり山あり谷ありの将棋だったと思いますが優勢な局面で勝てなかったのは自分が弱いからで…ツツカナは強かったです。」

コンピューター将棋協会の小谷副会長「えーと、まず非常に感銘を受けたことがあるんですけど、第一回の電王戦も見せていただいたが、米長先生のときは戦わないで真ん中を盛り上げて…という作戦だったが、そういう作戦がいいんだ、と思っていたが普通の戦い方でかなり有利なところまでいったのはすごかった。もう一つあるのは、コンピューターと人間が対戦するということは変なことが起きうるのでルールをしっかり作ったのですが、特殊な状況にならなくてよかったなと」。


堀口七段「(本局の総括を)本当になんと言ったらいいのか、壮絶な戦い。184手。戦い始まって入玉でもなく184手。見応えのある将棋。ツツカナの積極的な序盤にびっくりした。あんな攻めがあるのかと。調べてみると大変だった。コンピューター将棋の感覚は凄いなと。しかし終始戦いは船江のペースだった。後半からはまず普通は逆転がないのではないのか?というところからのツツカナの決め手を与えないターミネーターのような強さを感じました。たしかに歴史的な第三戦でプロ棋士としては残念でしたが両者とも得ることが大きかった」

田中寅彦「一言でいえば、大変残念な勝負だった。前局もそうですが、最初に行った米長邦雄の戦い方とはだいぶ違った。コンピューター将棋の弱点をうまくついたが、ツツカナも勝負を諦めずに戦っていた。弱い頃の羽生善治を思い出した。再戦を期待したいような、将棋に勝って勝負に負けたようなものだった。コンピューター将棋も凄いところまで来たが、まだ弱点は残っていると思ったので、塚田・三浦には頑張って貰いたい。」


塚田泰明「(どんな思いでいますか?)そうですね、本当に船江さん残念で途中まで必勝という局面まであったと思いましたが、持ち時間が長いほうがいいといったんですがね。人間が一旦優勢になる局面でどのぐらい時間があるか?というのが重要」

船江恒平「(塚田さんへ伝えたいことは?)自分からはないです。今日のような逆転負けしないように頑張ってください」


続きまして、メディアからの質問。


山崎バニラ「本日パソコンが急に変更になったということで詳しいスペックを」

一丸貴則「(前略)ドスパラさんに提供してもらった。32ギガのメモリ。CPUが主に関係ある。当初使う予定のものよりも2割スピードが増している。レーティングでは殆ど変わらないかもしれない、数を重ねれば差が出てくるぐらいの差」

週刊将棋「今回電王戦で船江さんと戦うにあたってカスタマイズしましたか?」

一丸貴則「△7四歩は作戦です。四手目をどうするか?はずっと考えていて、他の手は対策されているような気がして疑心暗鬼になって7四歩を指しました。船江さん対策としては終盤が強いので序盤で差をつけられないように、序盤で時間を使うようにしました」

観戦記者「7四歩について、どのように考えましたか?」

船江恒平「予定していない形になりましたけど、普通に指されても自然に指そうと思っていたので、実戦例もあるので研究会で指したことがあったので戸惑うことなく、自分の力を試せるということで嬉しかった。(中盤の△5五香は?)そうですね、いい手だと思いました。全く考えていませんでしたし。指された瞬間意味が分からなかったが、考えていくうちになるほどなあという感じをうけました。あの少し前ぐらいまでは自分が優勢だと思っていたが持ち時間をかなり使ってしまった」

読売新聞「対戦してみてコンピューター将棋の強さはどの部分が一番?」

船江恒平「そうですね、対策していたときからわかっていたが最後の粘り強さが一番。そこで自分がもっと粘り強くさせていれば。終盤の粘り強さ、ソフト全般を通してそうだと思いますがやっぱり凄いなと」

フリーライター(戸村賢一さん)「まずツツカナのいちまるさん、最後三三分から一分で指されていますが、余裕をもってそうなっていたのか?内部クロックによるものか?」(ご指摘ありがとうございます。>戸村様)

一丸貴則「ツツカナの内部クロックはチェスクロック方式で時間をカウントしているため、本対局で使われている1分未満切り捨て方式と比べ、持ち時間より早く減りました。それが積もりつもって持ち時間残り33分の時点で1分将棋になってしまった、ということです。」

船江恒平「(ペース配分は?)序盤一時間中盤二時間、終盤一時間というイメージだったが、わりとその通りいったが、終盤が予想より長くて足りなくなった。今日は三〇分の長考は一回だけだったと思いますが、それも決めていました」

産経新聞「一丸さん、終局直後に個人的に勝った気はしないと言っていたが?」

一丸貴則「船江さんが優勢になってから、時間がなくなって形勢が逆転してしまった、一瞬のうちに起こってしまった自分が納得できないじゃないですが、認識できないというかそういう感じになった」


朝日新聞「ソフト貸与されたが、それは求めに応じてときいているが何故貸与したか?貸与うけて活用できたかどうか?」

一丸貴則「私が許可したのは船江五段が全力を出し切りたいとおっしゃっているんですが記者会見で何度もきききまして、本当に力を出し切りたいのであれば、ということでなるべく新しいバージョンのを貸し出しました。」

船江恒平「ソフトの長所短所は数十局、指定局面もあわせるともっとですが、よく分かったので有りがたかったです。かなりの数指すことで自分の将棋の力も上達した考え方も変わった。自分の実力としては大きかった、ありがたかった」

報知新聞「一年前から向きあう期間があったわけですが、棋士としてどういう時間でしたか?」

船江恒平「一年以上前から決まっていたわけですけど、自分の甘さかもしれませんが現実感が昨年の夏ごろまではなかった。対策もあまり立てていなかった。知識は増えていたけど、夏ごろまではまだまだ甘かった。あまり緊張感というものもなくて、他の皆さんと同じで対戦相手が決まってから、それからはしっかりそれなりに出来たとおもいますけど。(今後につながる経験?)そうですね、大きな経験になりました・・・他の棋士の皆さんには申し訳ないですが、自分にとってはこの一年間ぐらい考えたことや今日の対局もそうですけど、すごく大きな経験をさせていただいたなと思っています。(失礼かもしれませんが「自分の弱いところがでてしまった」といっていたが?)主には精神的なところ、一局を通してかなりのミスをしたと思うんですが、途中までは立て直しながらいけていたけど、終盤にきて時間がなくて立て直せなかったのが敗因の一つ」

以上で記者会見は以上。

個人的な感想としては、兎に角感動しました。フルでじっくりみた初めての将棋だったから、というのもあります。普段は夕方に行きつけの飲み屋に行って、携帯中継でだけみていたのですが、今日は爆弾低気圧…ということで家で最後まで見ていたので。

ただ、団体戦としてはレーティングでベスト30ぐらいの位置にいる船江恒平が敗れたことで1-4か2-3の線、しかも1-4の線がかなり出てきたように思います。

あの序盤でこうなるとは…ということを思う一方で、将棋はもっと自由なんだ、という喜びも感じています。あの序盤で船江恒平が敗れるということは、力戦タイプの棋士のファンとしては、そして指す将棋ファンとしては、自分のMY定跡を磨くことの意義があるのではないでしょうか。

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電王戦関連の記事第1戦から第5戦までのリンク】

プロ棋士は強いんです!人間圧勝!第二回電王戦、阿部光瑠四段vs習甦

佐藤慎一敗れる。第二回電王戦第二局▲ポナンザ対△佐藤慎一

【追記有】将棋の常識が変わる?詰まし屋一閃?! 第二回電王戦、第3局▲船江恒平五段vs△ツツカナ

【追々々記有り】引き分け:入玉に賭ける星 第2回電王戦第4局 ▲Puella α vs △塚田泰明九段
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基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

将棋観戦中に書き始め、対局が終了すると思われるところから観戦記を完成させていることが多いです。文章内の形勢判断は個人的主観によるもので、観戦中の控え室のプロの意見を取り入れず、将棋ソフトの解析を行なっていないため、形勢判断が正しくない可能性があります。

また、あまり推敲することなく投稿しているので、観戦記内に誤字脱字、情報の誤りがある場合があります。お気づきの場合はコメント欄にてご指摘いただけると助かります。早急に訂正させていただきます。

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