混戦 第69期順位戦B級1組7回戦

前期A級から落ちた佐藤康光プロが気づけば一番手になっているB1。王位失冠の深浦プロは出遅れてはいるが順位的には全勝でまだ昇級可能であり、そういうマクリを、不屈の男の闘志をみてみたい気がしている今日この頃。

第69期順位戦B級1組7回戦

先手:行方 尚史八段?後手:佐藤 康光九段
後手佐藤プロの一手損。先日は幻のホームランというか、マラドーナの神の手ゴールというか、丸山プロのミスで銀河戦を優勝した佐藤プロ。後手番では中座飛車よりも一手損を愛用しているように思う。そしてそれが似合っている。後手一手損で勝つタイプの棋士を見てみると、大抵が豪腕・力戦に強いタイプ。

佐藤プロは緻密流というニックネームや若い頃の定跡系の将棋の印象が強く、力戦派とまではいえないものの、その力強さは群を抜いている。確かあのため息混じりの7割男(勝手に命名)である若き力戦の雄である山崎プロとの対戦成績でも圧倒しているはずだ。

本局のポイントは、穴熊の成否。穴熊にした後手が良いのか?という点。対穴熊を好む私としては、この角打ちからの馬生成というのは結構気分が良い。ただこちら側に成り返った場合、右玉などではよくあるが、相手玉を仕留めるまでが遠い、ということが事実としては、ある。

73手目の局面。玉の堅さは後手、手番も後手。駒割は▲銀桂△金の二枚換えで先手。棋理としては先手が駒得の分良いが、ここから勝つまでは長い道のりだ。佐藤プロは、その道のりを更に長くするという方針で指し進める。

途中まで先手が延々良かったように見えるが、108手目で既に怪しい。この桂馬のフンドシを食らうと先手玉が薄いのと同時に、入玉が難しくなる。後手の玉が堅いだけに、もう勝てない流れだろう。

実質3枚弱の攻めが続くが、堅陣を頼みに手抜きに出来るのでそれで攻め合いでの補充が図れる、という穴熊の良さを活かした攻めだった。これで佐藤康光プロ、6?1でトップを維持した。流石にお強い!


先手:井上 慶太八段?後手:山崎 隆之七段
若き力戦の雄、山崎プロが後手一手損に構える。先手相掛かり、後手一手損が山崎プロのスタイル。どちらも途中からは未舗装な道が広がるため、やりやすいのだろう。

飛車先不突きの一手損で、相腰掛け銀模様。それに対抗して先手は片銀冠模様に組む。このアイディアは、玉頭から攻められにくい対抗型ではあるもので、飛車先不突きであれば同じ道理。ただし弱点のひとつである桂馬の頭を袖飛車ですぐ狙われるのが対抗型との違いだ。

先手の先攻が一巡し、後手から景気の良い反撃で瞬間的には小さな駒とではあるが二枚換えで後手の駒得となるものの、手番は先手に移り、すぐに先手が駒損を解消する。なによりも先手の飛車が活躍していないようで確り働いており、後手の飛車が大威張にみえて、何の働きもない逆に負担になっている、という図が後手の山崎プロの錯覚により生じた。

しかし、このようなウッカリをこれだけ時間を残して終局した将棋で明言されるとファンとしては辛いものがあるが、本人はもっと辛いだろうし、それでもちゃんと伝えるあたりのファンサービス感とファンにとってのガッカリ感の絶妙のハーモニー。それにしてもウッカリの連続にドMなファンはシビレっぱなしではなかろうか、という位。67手目のコメントは必見である。

どの程度のウッカリでどの程度悪くなったのかは知る由もないが、駒得の推移だけを眺めていればなんとなくそれが感じられる。進むほどに貧乏になっていく後手だった。活躍が期待された、昇級候補の山崎プロだったが、四連勝の後の二連敗となった。

井上プロも4?2とし、順位の関係で二番手に浮上した。


先手:畠山 鎮七段?後手:中村 修九段
後手中村プロの陽動振り飛車。どんな将棋も指しこなす中村プロだが、こういう作戦を後手番でやらせるととてもよく似合う。

本譜の手順で美濃に囲い直すのは昔陽動振り飛車が流行ったときに良く見かけた気がする。そこから両者穴熊に組み上げるのが現代風か。

五筋で開戦したまでは良かったが、先手がそっぽの2筋3筋に手を付けたのに対し、それらを緩手とする後手の中村プロの動きが機敏だった。勝利打点は76手目の△2四歩。これが痛い。先手が苦労して指した手が全てお手伝いになった瞬間だった。

形勢が大差で投了は早かったが、この投了図は美しいと思う。武芸の達人が関節を極めて切っ先を喉元に当てたところで、参りました、という風情。これで畠山鎮プロが4?2、中村プロが消化が消化がひとつ多くて4?3となった。


先手:中田 宏樹八段?後手:松尾 歩七段
なんとなくだが、あの松尾プロがこの対戦時点で3?3の指し分けというのが信じられない。いつもだと4?2以上の好位置につけているのだが。それだけB1のレベルが高いということなのだろう。

戦型は後手松尾プロの一手損中座飛車。この一手損の意味は新山崎流を回避しているということだろうか。新山崎流は居玉で二筋三筋をガンガン攻めて来るもので、後手はどこかで右に逃げ出す。であれば、先に逃げておこうということでもあるし、逃げてるのに新山崎流はやってこないですよね?ということ。

先手は一筋を詰めて将来の端攻め、加えて近々では2一角の筋を見せて後手玉に戻ってきてもらう。

週刊将棋でダニーの2一角を狙った増田戦のダイジェストを見たが、単純には決まらないようだったが、一旦は戻るところのようだ。後手としては一筋から攻めてくれるのであれば、そしてそれからおもむろに右に逃げれば、甘くできるのでまあいいでしょう、ということだろう。

類似局では、今期A級の丸山高橋戦がある。

58手目時点ではパッと見、後手が良さそうに見えるがどうだろうか?少なくとも切れることは無さそうで、方針も分かりやすく見える。先手は一筋の位が効いてないのもムカつくところだ。

その後も形勢が変わること無く松尾プロが押し切った。松尾プロ4?3、中田プロ3?3。


先手:豊川 孝弘七段?後手:屋敷 伸之九段
中座飛車だったが、途中から力戦調に。素抜きが連続する激しい戦いだったが、中盤で突如終局した。具体的な形勢はさておき、こういう展開になれば後手としては、不満がないと思う。屋敷3?3、豊川2?5となった。


先手:鈴木 大介八段?後手:深浦 康市九段
最近居飛車も始めた鈴木大介プロが未だ一勝の深浦プロと。

戦型は先手中飛車だった。この二人で先手鈴木プロで対抗型ではないことは想像出来なかったのでなぜだか安心した。(鈴木プロは後手番で一手損をやる、ということだけでしたか?)

この二人だと後手居飛穴か?と思ったら、深浦プロがガンガン攻める。二枚の金が一段目にある状態で二枚銀での攻勢をかける将棋となった。

一段落した65手目。手番は後手、駒割は▲銀△金でやや後手、玉形は金銀の枚数と端をみて後手だろうか。攻撃陣をみても、後手の歩が五段目に並ぶ姿が美しいのに対して、先手の飛車は一目窮屈だ。

第二次攻撃が開始され、後手良しのままに進んだ78手目の△9八飛が勝利打点の味。一目違和感がある場所なのだが、投了までの手順をみるとナルホド納得の良い寄せの構想だった。8九に打った場合と大違いで、8九だと底歩を打たれてしまう。

片美濃の要の金を上ずらせるが如く、おびき寄せて無力化するこの寄せは居飛車党としては本当に気持ちが良い。これだけでご飯三杯の手順だった。


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七回戦終わった時点で全員2勝以上の大激戦となっている。

昇級レースは。6勝1敗で佐藤プロがトップ。順位も二位なので、もはや当確ランプを付けたいぐらい。4勝2敗で続くのが井上プロ、山崎プロ、畠山鎮プロ。井上プロは流石の順位一位の貫禄を示している。順位6位の山崎プロは連勝後の連敗でやや失速。畠山プロも佐藤・深浦を破っているだけに勿体無い2つの負け。


降級レースのほうは2勝5敗で四位の行方プロ、八位の鈴木プロ、九位の豊川と続く。この5敗の三名は挑戦争いから脱落し、留まるための戦いになるが、それ以外の4敗以下のメンツはまだ昇級可能性がある。特に冒頭で書いた通り、残り全勝で深浦プロが上がる、という姿を私は見たい。



プロへの道プロへの道
(2009/05/23)
深浦 康市

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