普通の四間飛車穴熊 第4回大和証券杯最強戦 ▲森内俊之-△広瀬章人

第4回大和証券杯最強戦 ▲森内俊之-△広瀬章人

兄弟弟子対決。森内プロは言わずもがなの実績だが、昔NHK杯か早指し戦で神吉プロに相穴熊で負けた印象が強すぎて、実は相穴熊は苦手なんじゃないか?という偏見が拭いきれ無いのだが、本局で払拭されたかもしれない。元々相穴熊が不得意な棋士ではないはずなので良かったと思う。

本局は、序盤に一つの見どころがあった。森内プロの作戦は銀冠からの穴熊だったのだが、まず片銀冠に囲い、二枚のまま、端も突かずに二枚穴熊を優先させたということ。片銀冠二枚穴熊の姿はとても不思議な感じがした。

広瀬プロの穴熊というのは、序盤で攻勢を取りやすい形を相手に強要し、そこから技を掛けに行くものだと思っているが、本局においては如何にも普通の穴熊。若い頃、四間飛車穴熊のスペシャリストだった鈴木大介プロ(鈴木流四間穴熊 (振り飛車新世紀)という著作もある)だが、この銀冠穴熊が優秀で、7二飛車の袖飛車から反撃する筋ぐらいしかないがあまり利いていないので、穴熊を諦めた、という解説も説得力がある。

私も一頃は穴熊を指しまくっていたが、この7筋からの反撃というのは、景気が良さそうに見えて大した事無い、というのは確かにある。対急戦で突き捨ててから飛車を転回する、歩を垂らす、という将棋はそこそこおもしろいのだが…。

森内プロの41手目が機敏だった。
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普通に7筋の歩を交換して、さてどうしましょう?という局面で指された▲2四歩。ツイッター上での強い方のコメントでは「島ノート 振り飛車編」に出ている変化だという。その中のものとして提示された手順は確かに先手が勝ちそうなものだった。

どうするのか?と見ていると広瀬プロの応手はごく普通。先手から要求した工夫の手順であり、後手が変化する余地が少なかった。このあたりは序盤で二枚銀冠穴熊を作ったところの成果が現れているように思った。

変化できそうな局面としては44手目がありえるが、鈴木大介プロが推奨する△4五飛車という手は、なんというか岡目八目的な、お気楽な手だと思う。パッと見▲7二歩から飛車切って△6一角とか、7筋を切った手を逆用されるのが悔しいし、2四歩を同角と取ったのも、裏目に出ているような含みが多すぎ、色々ありそうで好んで選ぶ手ではなく、プロであれば、研究していて指せるかどうかを判断したいところだろう。

というわけで普通に飛車を引いた広瀬章人プロ。先手の角のぶつけに対しても、△3三桂からのカウンターパンチの準備は、4三の銀が取り残されそうで指せないということで、仕方なく△3五歩。

このあたりを見ていて「あー普通の四間飛車穴熊(の苦労)だなあ」と思っていた。

相手が四枚穴熊、ビッグ4の堅陣に組み上げることが明らかでも△6五歩と突くしか(手が)ない。後手が仕方なく攻めて来た△4五桂馬の単騎跳ねに対する▲4六歩からの森内俊之プロの構想が見事だった。桂馬クーポンを集めて、兎に角8三の地点を圧倒してしまおうというものだった。

4五の歩が利いている地点に跳ばれると放置したくなるところだが、5三の地点に成る手があるので取らざるを得ない。そして悠々一歩入手する森内プロ。速度計算において先手が速く、堅さも先手、手番ぐらいは差し上げましょう、という余裕の一手だ。

66手目の△6六歩が広瀬プロらしいギリギリの手裏剣だったが、ここからの森内プロの手順がそれを上回っており、広瀬プロに粘る余地すら与えなかった。「相手の手に乗って捌く」という言葉があるが、本譜の手順がまさにそんな感じで、後手の指し手が全てお手伝いになるような素晴らしさ。6八にいたはずの先手の銀が何時の間にやら、攻めの急所である8三の地点を狙う7五の地点に進出していた。

そして74手目、金取りを放置して突いた▲8四歩が本局におけるMOM(Move of the match)だった。金を剥がされても後手からの早い攻めはなく、桂馬を入手することのメリットのほうが大きいという判断で、確かにそのとおりだった。後手が端歩を突いていないことも裏目に出ている。(もっとも突いていたら端攻めがあっただろう)。

このあたり、将棋の作りとして全てが先手に都合の良い状況になっており、序盤から延々と苦労が絶えないあたりは、本当に普通の四間飛車穴熊だった。84手目の△6八金はなんというか、キャンセル待ちのような手に見えた。その後は事務手続きのような手順で先手の森内俊之プロ、兄者の貫禄を見せつけた。

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本局においては、広瀬章人プロの穴熊の怖さ、みたいなものは全く感じなかった。手順的に普通の四間飛車穴熊の苦労が延々とつきまとうような将棋で、文字通り先手が先手先手と策を講じていたように思う。

実は「将棋世界 2009年 08月号 [雑誌]」の126ページにおいて、夏の定跡講座というタイトルで、振り穴王子こと広瀬章人プロによる対銀冠講座が開かれていた。

その枕で広瀬プロは以下のように語っている。

さて、私は公式戦を今まで指してきた中で圧倒的に多いのが、四間飛車穴熊である。それに対し、相手も穴熊に組んでくるのもこれまた多いわけだが、その次に多いのが銀冠である。

銀冠の特徴としては堅さと広さを兼ね備えていることが挙げられ、振り飛車穴熊側から見ればかなり厄介な戦法だ。

実のところを言うと、私は対銀冠が苦手である。いや、厳密には自分では苦手意識は全く無いのだが、毎回苦戦するのは免れないイメージだ。これはただ単に私の序盤力に問題があると言ってしまえばそれまでだが…。

穴熊で銀冠を相手にするときは、とにかく銀冠の圧力に押されないように序盤から気をつけて駒組みをする必要があるので注意していただきたい。(オマエモナー)



当然最後のオマエモナーは私の悪ふざけである、スミマセン。。

本局の結果と上記の内容を踏まえて考えると、王位戦第二局で深浦プロが採るべき戦法は決まったようなものだ。もし穴熊が来れば銀冠(穴熊)にするのが良さそうだ。

計算の世界に突入するとその能力を最大限に発揮する広瀬将棋だが、元々序盤が上手くないという話で終盤型だったはずで、森内プロのように序盤で相当工夫されるとその本来の力を発揮出来ない可能性がある。王位戦第二局でいきなりこれを食らうよりは、兄弟子に稽古をつけてもらって、予習の時間が出来たのは大きい。

なんらか具体的な修正案をもって第二局に臨むだろうし、なければゴキゲン中飛車など他の戦型を指すのではないかと思う。

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