三段の初優勝からの… 第44期新人王戦第三局▲藤森哲也vs△都成竜馬

先手横歩とらずからの、相掛かりに進んだ。

先手はヒネリ飛車かな?と思ったがちょっと違う。でもこれもヒネリ飛車の一種であるとしてもよさそうな形。

シンプルな美濃囲いがヒネリ飛車の良さかなと思っているのでなんとなく意外な先手の陣形。銀を二枚、玉のそばに配置したが、そんなに固く見えない。

控室の田村七段いわく「組み合ったところでは先手の作戦負け、ただし勝敗は別」とのこと。

確かにそうかも?と同意しつつも、先手陣が見慣れないのでうまく評価できない。もしかするとこういう力戦調でのこの囲い方における経験がなにかしら先手の藤森プロにはあるのかもしれない。

すごく勝ちまくる将棋ではないけど、変なところに網を張ってるタイプだな、と思う。ブルーオーシャン戦略というか、深海魚作戦というか。

そして勝ち上がり方もかなりドラマチック。高校野球で強豪校じゃない公立の学校が勝ちあがってくるような、劇的な逆転でここまであがってきた。

そういう意味では、彼の将棋を評価する場合に、作戦勝ちとか作戦負けとかそういうのはあまり意味がないのかもしれない。

重馬場になったときに、混戦模様で抜け出す勝負根性に優れた、そういうタイプなのだろう。

で、対する都成竜馬三段。ここ最近の棋士や三段陣には、小学生名人戦時代に見かけたこと(もちろんテレビで、ですけど)を覚えてる棋士が増えてきた。

この都成竜馬くんもその1人。昔を知っているとやはり上がって欲しいと思うのが親心。こういうのって、女性がジャニーズジュニア時代から応援する気持ちに似てるのかもしれない。。。

先手のやや歪な形に対して、後手のほうはスッキリしている。対ひねり飛車と思えば普通の形で、ただし一方的に2筋の歩を交換されて先手に持たれているのではなく、後手も切れた状態であり、しかも4筋の位がとれてるのが駒の運用を楽にしている。

結局組み上がった後に攻めたのは後手。そしてそのまま後手が自然な駒の運用であっさり勝ち切った、という印象の将棋だった。

非常に無理のない、機能的な駒の配置からその性能を素直に出し切ったいわゆる筋の良い、きれいな将棋だったと思う。

現代将棋における後手番の辛さを考えると、驚くべき楽勝というか。

で、三段の優勝が初めて実現してしまったわけです。


都成奨励会三段、初の新人王に ~奨励会員としては史上初めて~

本日、東京・将棋会館で行われました第44期新人王戦(しんぶん赤旗主催)決勝三番勝負第3局で、都成竜馬奨励会三段が藤森哲也四段を破り、対戦成績を2勝1敗とし、初優勝しました。44回を数える本棋戦で、奨励会員の優勝は初めての快挙です。

第44期新人王戦で優勝した都成竜馬三段
都成三段のコメント
「まだ実感がわきません。せっかくの大舞台なので一生懸命やろうと思っていました。奨励会員で史上初めてということは意識しないようにしていました。優勝できたのは光栄です。この優勝は自分にとって、すごく自信になったので、次の三段リーグを頑張りたい



さて。最後の部分、太字にしましたが。そうなんです、都成竜馬三段は優勝しましたが、この優勝は名誉であり、快挙であり、お小遣い稼ぎにはなるわけですが、三段リーグで勝ち上がらない限りは、この優勝の意味というのはそこまでにとどまるということです。

正直に書くと、私はこの優勝が起こるまでは三段が参加する棋戦というものについて、あまり真剣に考えてきませんでした。(ま、趣味の世界なので当然といえば当然かと思いますが…)。

しかし、都成竜馬三段が優勝してふと、思ったんです。三段がプロ棋戦に参加することの意味ってなんなのだろうと。

総てをお金に換算して考えることは不粋なことだとは思いますが、知能指数と将棋の実力というのは多少の相関があるので、この修業している人たちが別の経済活動の方面にその才能を投入した場合、通算で得られるお金の期待値というのは、将棋を目指すよりも大きい可能性があります。

でも彼らは将棋を目指している。そういう若者に、プロにはなるという点においては一ミリも貢献出来ないけれども、活躍の場を与える、という意味がこれらの三段参加可能な棋戦にはあるのでしょうか。

女流やアマ参加OKというのとは少しだけ意味合いが違うような気が、今更ながらにしています。

今まで、三段参加していた人たちの気持ちとしては、当然このような舞台に修行の身でありながら参加できるのは光栄です、といったものだとは思います。

ただ、ある意味、そういう気持ちをうまく利用しているという面はないだろうか。そのように今回の優勝をみていて私は初めて感じました。

どのような世界でも、その場その時点での振る舞いというのは、自身のためだけではない、と私は考えます。情けは人の為ならず、じゃないですがその人が切り開く事により、後進の人々が自身の可能性を発掘したり、成功に到達するための礎となることがあるのではないかなと。

プロ野球選手の待遇というか年俸を上げていくために頑張った落合選手、メジャーへの道を切り開いた野茂英雄投手、将棋の世界でいえば、対プロで高勝率を上げてプロ入りの枠組みを整備するきっかけとなった瀬川さん。

今回の優勝には、それらと似たような意味があるのではないかなと。

都成竜馬三段がこれをもって四段になる、というのは難しいかもしれません。或いは次点1点付与という特別の配慮というのは、前会長であればやった気がしますが、谷川浩司会長の場合はキャラ的にも、そして自身の愛弟子ということもあり、難しいでしょう。(ぜひやってほしいと思いますが)。

ただ、三段を代表して都成竜馬が勝ち得たものが何なのか、ということについて、一度議論されるべきではないか、という気は私はします。

こういう想像はあまりするものではないと思いますが、都成竜馬がこのまま四段になれない可能性もあるわけです。これは三段準優勝で成れなかった人たちが過去に複数人いることでも現実味のある話です。

勝負の世界なので、これをもって一発四段昇段というのがいいのか、或いは次点1点付与がいいのか、もしくはフリークラス入りという道がいいのかはわかりません。

しかし、三段が「四段昇格という面においては特に意味のないままに棋戦参加すること」というのをもう一度考えるべきではないかなと。

今回の都成竜馬三段の優勝によって世界は変わったわけです。今までは三段優勝がなかった世界であり、これからはそういうことが起こりえる世界。今までもそういうことを考慮したルールでしたよ、ということもあるかもしれませんが、理論上起こりうることと、実現してしまったということの間には深くて大きな谷が広がっています。

どうかこの優勝が単に起こってしまったこと、として終わらないことを祈っています。

同じことが、プロアマでも電王戦でも言えると思いますので、それらについても実現してしまった後の世界、について想像力を働かせて、どのように対処するのか?というのを考えて実行していくことが重要なのではないかなと。

そういう意味においては、米長邦雄という男は、やはりセンスがあったなと私は思うわけです。どこかの薄暗いところで、やらない理由を書き立てるよりもよっぽど良いというものです。

もちろん、谷川会長の愛弟子というところが事態をより難しいものにしていますが、加古川清流戦?とこの赤旗新人戦のような三段参加棋戦における、三段の活躍について、何かしらの配慮がなされる、あるいはその配慮の検討は行われるべきだと私は思いました。

もちろん考え方は人それぞれですのでそれらを尊重しないわけでもないですし、何も行われないというオチも当然あると思いますが、私はそのように思いました、という話でした。。



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2010年11月8日?12日の携帯中継限定の二局(瀬川vs加藤、北浜vs金井)

朝日杯の二次予選があったおかげで沢山プロ棋士の将棋を堪能できた一週間だったが、携帯アプリ用に限定公開されていたものは以下の二局で、どちらも対局者(特に勝者)の持ち味が出た将棋だった。


11月8日 王座戦一次予選 瀬川晶司vs加藤一二三
写真 (1)

後手加藤一二三プロの横歩取り8四飛型+中原囲いに対して、先手の瀬川晶司プロが中住まいで迎え撃った一局。この局面をみてどちらが良いと思うだろうか?

玉の堅さは後手、(受ける必要があるので)手番も後手、駒割は▲角△飛だが、この後の二枚換えをみれば▲金銀△飛ということになる。

この局面は以前も出現していることから二枚替えとはいえ、先手もやれるという判断なのだろう。しかし勝ったのは加藤一二三プロだった。

私がこの局面をみて思ったのは中期の中座飛車であった先手▲6八玉型における後手松尾新手の△5五飛(角の利きに出る)だった。この飛車は取れない。

部分的な条件としては?先手の玉の位置が6八ではなく5八、?松尾新手が4四角打ちで飛車取り+8八の地点での二枚替えになっている、というのが違う点。

松尾新手がやれるのであれば、上記条件の違いが如何ほどか?というのがこの手の成否を分けることになろう。

加藤一二三プロは本局の戦法の途中段階局面で過去3戦全勝、本局も勝ちとなって4戦全勝となった。今後も出現するかもしれないので要注目の戦型だ。



11月九日 棋聖戦二次予選 北浜健介vs金井恒太 
写真 (2)

細くて五月蝿い攻めをやらせたら天下一品の北浜健介プロと、我、端歩をじっとついて蟹とたはむるという渋い棋風の金井恒太プロの対戦。

戦型は相掛かりから先手のヒネリ飛車となった。先手が後手の8五の歩をただ食いするために角を投入し、そこから謎の応酬が続く。

そして出ました、63手目の▲1五歩。私はこういう手が大好きで。とりあえず味付け、歩を沢山持ったし角も利いてるから突き捨てとくか、という手。

多分細かな先の運用は決めていないと思うが損にならないだろう、という考えか。

ここからも両者捻った応酬が続くのだが、この▲1五歩をキッカケとして玉頭戦になっていくのだった。(結果は先手の北浜プロの勝ち)。


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「将棋観戦記」というブログで、プロ棋士の将棋を観戦して思ったことを記しています。棋力はありませんが、将棋観戦の楽しさを一人でも多くの人に知ってもらい、「観る将棋ファン」を増やすために貢献できればと思います。主に順位戦速報・タイトル戦等、ネット中継されている将棋を中心に将棋観戦記を書いています。棋譜・符号はなるべく用いずに、将棋のルールが分からない人でも、将棋の勝負の面白みが伝わるように努力します。

基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

将棋観戦中に書き始め、対局が終了すると思われるところから観戦記を完成させていることが多いです。文章内の形勢判断は個人的主観によるもので、観戦中の控え室のプロの意見を取り入れず、将棋ソフトの解析を行なっていないため、形勢判断が正しくない可能性があります。

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