2010年11月21日第60回NHK杯二回戦第十五局 ▲丸山忠久vs△豊川孝弘

居飛車党同士の対戦。豊川孝弘プロが比較的独特な戦法を用いる印象があることから、後手番戦術に注目した。

2010年11月21日第60回NHK杯二回戦第十五局 ▲丸山忠久vs△豊川孝弘

豊川孝弘プロの作戦は△3三角戦法だった。居飛車においても有力だが本局は立石流系の組み立て。

先手は右金を初期位置に置いたまま、玉頭方面に位を張る。双方の金が1枚玉から離れているが、低い陣形の後手と模様を張った先手という構図でアマのある程度のレベルまでは後手が勝ちやすいように思う。

それだけに、逆にプロの将棋におけるこういう指し方で居飛車側がどのように勝ちきるのか?というのはとても参考になる。

本局はお互いの勢力が均衡している1?4筋方面では王手飛車ラインをチラつかせながら、飛車の交換だけは避けるようにし、その隙に玉頭方面で成果を挙げるという方針を先手居飛車の丸山忠久プロが見せた。

桂馬の交換となり、今度は得た桂馬を用いて二筋に転戦、と金を作ったところでは先手が良さそうだ。

103手目、後手の要求に応じて飛車交換したのは驚いたのだが、後手に持ち駒がなく、左苺囲いが案外に堅い。

111手目の純正「王手角取り」がほぼ勝利打点の味。非公開対局であればこの数手前で投げていてもおかしくない。というわけで後はTV用の模範演技的な収斂。

振り返って考えると50手目周辺の後手からの攻撃に対して玉頭の位取りを活かした王手飛車ラインを見せる、という構想が良かったということだろう。

確か一頃丸山プロは△3三角戦法を用いていたので、その頃にこういう対策があることを知っていたと思われる。

私クラスだとなかなかこのように行かないのだが、考え方・指針については大変勉強になった。


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清水市代女流王将vs.あから2010(コンピュータ将棋ソフト)の感想

遂に世紀の対決が始まった。

2010年10月11日 清水市代女流王将vs.あから2010(コンピュータ将棋ソフト)

持ち時間は3時間。戦型はどうなるだろうか?清水女流は居飛車。先後は振り駒だろうか。あからが先手番になって▲2六歩となった場合はかなり厳しい気がする。或いはあから後手番での横歩取りや一手損。女流で流行っていない形になった場合の難しさはあるかもしれない。

個人的には相居飛車が見たいが、対抗型であから穴熊に組んだときに清水女流がどういう陣形を選択するか。

どちらになるにせよ、延々と定跡を踏襲するような将棋には、清水女流がするとは思えないので、力戦調持久戦で斬り合いになるべく持ち込まずに入玉を狙うのがいいと思う。あからが四間飛車穴熊に来たら、右玉にして…と思うが右玉にしてボコられると先日の新人王戦のように恐ろしいことになるので勇気がいるところ。

…とここまでが私の戦前の予想というか期待していた点。

対局は始まってみると後手あからの△3三角戦法となった。清水女流は普段はあまり見せないように思う居飛穴を志向したが、不慣れなせいか、或いはあからが機敏だったのか、囲い切る前に開戦となった。

パッと見の私の意見としては、31手目の▲5九金が緩手だった可能性があるように思う(ただしプロ棋戦でも似たような例はあるとのこと)。32手目△4四角に対する▲4五歩も堂々としているようで危険だったか。

戦いが一段落した44手目の局面。手番は先手。駒割は▲金△桂(歩歩)で判断が難しいが、歩が関係ないとすれば先手だし歩切れの先手に対して二枚持っている後手を評価すれば後手。陣形はこれまた難しいが攻め駒との関係で後手のほうがやや安全だろうか。このあたりの形勢判断はとても難解。

コンピュータがこの桂金交換を許したということは、与えた金の運用先がないであろうこと、歩を二枚貰ったこと(厳密には金と歩歩桂の三枚替え)を高く評価したということなのかもしれない。人間だとこの金桂交換を避ける順から読むはずなので異感覚に映る。

49手目の▲4二角成の瞬間が甘く、後手のターン。得た二枚の桂馬を立て続けに打ち据え、二枚とも丸々金に替った57手目のところでは後手のあからが良いと思うがどうだろう。

ただし、攻め駒の飛車が隠居しており、狙いの先手玉のコビンもまだどうなる感じでもない。どうするのか?と見ていると△5二金打として、彼我の安全度の相対的な差を広げ、あわよくば本譜のようにお荷物の飛車と手数を掛けて作った先手の馬を交換してもらおうというものだった。交換となった辺りでは後手良し。

63手目、二枚の桂馬を得て、後に角の入手が見えている先手が控えの桂馬を▲8六桂と打ち据えたが、これを放置しての後手あからの応手が異筋の好手だと思う。

64手目の局面。ここであからは△6九金と打った。
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この金に▲2四飛と走ると角を打たれて2二の角を取ると先手玉が詰んでしまう。先手陣は金銀があるものの、二枚は上ずり一枚は一段目にあるために守備力が低いのだった。

前述の筋を防いで▲7八金と引くと今度は玉のこびんが危うく、それを狙う△5七角。それに対して▲7七銀と引くと△5六銀で後手の駒が左香以外は全部使えるようになった。
ただし66手目の局面で、プロの見解としては▲7七銀以外の手を挙げる人が多かったようで、▲7七銀と△5六銀の交換は後手がかなり得をしたようだ。(ツイッター上では戸辺プロといつもん氏が▲4九飛を推奨しており、それにて先手が良いのではないか?という話まであった。となると△6九金は悪い手だったか?)。

その後も後手のあからの方に面白い手が連続する。終盤で印象に残った手としては△5五角(頓死筋の防ぎ)、△8五銀(一手スキ)だろうか。特に△5五角は焦りすぎない柔らかい好手だと思う。

結果だけみると序盤は難解だったものの、途中からは後手のコンピュータソフトの圧勝だった。この将棋の異質なところは、先手が歩を手にすることも後手が得た歩を使うことも終局まで一度も無かったということだろう。

清水女流は何の得もない勝負を勇気をもって受けて、この日唯一戦っている生身の人間として正々堂々の勝負をみせてくれた。並の男であれば、平常心を保つことすらままならない戦いだろう。普段はみせない着物姿に込められたものを考えずにはいられなかった。

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コンピュータ将棋の弱点

それは恐怖や痛みを感じないことだと思う。これはコンピュータ将棋の長所でもあるのだが、長所と短所は表裏一体だ。

本局でいえば63手目の▲8六桂に対し、あからは全く受けなかった。(本譜においては確かに受ける必要がなかったが)。数年前に行われた渡辺明vsボナンザの際も、相穴熊に知悉した人間ならば一目の竜切りの筋を、その効果が形としてではなく、実利として生じるのが先だったために候補手として上がらなかったのだった。

今回、合議制であってもその痛みと恐怖心の無さを完全には無くすことが出来なかったようにも思うし、その一方で冷静な△5二金?△2二飛という手があったことを見ると多少は解消されているようにも思う。(どちらの手も合議制によるものというよりは、ある一つの個性をもったソフトによるものの可能性も高いが、違う個性のソフトを組み合わせるメリットが出ている)。

人間側の戦略としては、コンピュータが震えることがないために、気づかぬうちにどうにもならなくなっているような戦い方が良いのだろう。そして現時点では入玉がその一つに挙げられる。


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ではコンピュータソフトの実力はどの位あるのか?

将棋連盟の出版事業を一元委託されている毎コミュ。そこで販売している将棋ソフト激指の広告は機関誌である将棋世界にも掲載されている。そこには控えめではあるが堂々とこのように記されている。

本ソフトの(中略)強さは「将棋倶楽部24」でレーティング3000点台(プロ級)といわれています。



戦前の清水女流vsあから2010の勝敗予想では、元奨励会三段で週刊将棋編集長だった古作氏などが2?8程度を予想しており、これはちょうど女流棋士の対男性プロとの勝率(対男性棋士で2割弱の勝率)に近く、プロレベルであることが確認される。

以下、私が戯言レベルの話として書いたコンピュータ将棋の実力に関するもの。日付が古いものから順番に並べており、一番下のコンピュータ将棋の将棋倶楽部24でのレーティングは3000点以上か?が最新。

もし新四段に8割勝つレベルだとするとプロ棋士レーティングでトップ20ぐらいに位置することになる。ここを上限とし、最大で見積もってプロのトップ20と同格、最低でも奨励会三段リーグレベル。ということになる。

私は何度か清水女流が男性棋士と戦う姿を見ているが本局ほどの圧勝劇というのはなかなか無いように思う。少なくともプロ四段クラス以上であることは間違いないのではないか。

今後、連盟が指定する男性棋士が対局する予定であり、最終的には名人か竜王が対戦するとのこと。名人竜王といえども、100%勝てる相手ではなく、せいぜい7?8割ぐらいだろう。そして現時点の羽生・渡辺に2?3割勝てるプロというのは低位?中堅クラスぐらいに位置しているという事実があり、そこから考えるとコンピュータ将棋は既にプロの中堅ぐらいまで来ている可能性がある。

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コンピューター将棋(将棋ソフト)の実力(レーティング)は奨励会入品レベル

続:コンピューター将棋(将棋ソフト)の実力(レーティング)は奨励会入品レベル?

コンピュータ将棋のような、羽生善治プロの第一次全盛期(の将棋の例)

コンピュータ対羽生名人まである可能性

#csalive ターミネーター製造工場の視察 ?第20回世界コンピュータ将棋選手権を3日間眺めての感想?

コンピュータ将棋の将棋倶楽部24でのレーティングは3000点以上か?


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最強が最善 第41期新人王戦決勝三番勝負第1局 先手:阿部健治郎?後手:加來博洋

デビュー後8割超の勝率を誇る阿部健プロ。渡辺竜王の六連覇、3連敗からの4連勝の原動力となったのが渡辺新手として記されることとなった後手番の急戦矢倉だったわけだが、元々研究会の将棋で指したのが、三段時代の阿部健プロだったのは有名な話。

また、昇段の際の渡辺明竜王の評として「以前は序盤巧者で中終盤にひ弱さがあったが、それがなくなって四段になった」というようなことを言っていた記憶があり、てっきり序盤型の作戦家なのかと思っていた。指している将棋をみると力戦形での力強さも目立ち、どちらも得意とは凄い棋士だなと感心していたのだが、実はどちらかと言えば独自研究での力戦形、ということらしい。

対する加來博洋アマは三段リーグの勝率が5割5分ぐらいあり、上がってもおかしくなかった人。得意戦法は右玉模様のようであり、棋譜は見ていないが新人王戦の勝ち上がりでも多投していたようで、かなりの大逆転を2つ含む逆転勝ちの連続でここまで来た。

前期新人王が広瀬新王位であり、過去の新人王も殆どの棋士がタイトル挑戦以上を実現しており、小学生名人とともに、同世代でのトップであることを知らしめる格好の機会である。また、加來博洋アマにとっては、ここで勝てば、瀬川コースをもう一度、という嘆願まであるだろうから負けるわけにはいかない。

右玉を好んで指す私としては、どちらかと言えば加來博洋アマを応援したいし、8割勝っている若手が対右玉にどのような戦い方を見せるのかにも注目したいところだった。

第41期新人王戦決勝三番勝負第1局 先手:阿部健治郎?後手:加來博洋

後手は△3三角戦法。少し意外に思ったが、そこからの手順が面白かった。この組み方で右玉に出来るのであれば、手の損得だけでいえばかなり得だと思う。

38手目の△2九飛車で後手は準備完了。先手はまだ有効な手がある状態。形勢でいえば後手が良いわけではなく、玉の薄さはどこまで行っても気になるところだが、とりあえず組み上げたいと思われた理想型は築けたのだろう。

開戦は43手目。先手の▲5五歩から。この歩交換で普通に収めては後手が作戦負けになりそうだというのは、解説チャットの佐藤和プロ。渋いいい声をしている見た目が福山雅治風の好男子だ。

しかし右玉ということを考えると収めてどうだったか。本譜は先手の攻めが炸裂してしまった。というか、「最強の手が最善ではないby羽生善治」という言葉を思い出しながら見ていたのだが、本局については、最強が最善だった。

後手の56手目△4三金右が危険だったようだが、55手目の▲3四飛に持ち駒を投入して粘るならば、△4五歩と突っ張る手自体が駄目だったのかもしれない。

そこからは右玉党だと見慣れた風景。最善で粘っても自玉だけ終盤になっては勝てないとしたもの。結局先手玉には一度も王手が掛からずに終局となってしまった。

先手アベケンプロの圧勝劇だったが、右玉で負けるときというのはこういうものが必ずあるので仕方ない。加來博洋が次局先手番でどのような戦法を用いるのかが今から気になるところである。

右玉戦法関連書籍

上記は、糸谷流右玉の講座が載っていた将棋世界を含む、右玉に関する書籍リストです。

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基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

将棋観戦中に書き始め、対局が終了すると思われるところから観戦記を完成させていることが多いです。文章内の形勢判断は個人的主観によるもので、観戦中の控え室のプロの意見を取り入れず、将棋ソフトの解析を行なっていないため、形勢判断が正しくない可能性があります。

また、あまり推敲することなく投稿しているので、観戦記内に誤字脱字、情報の誤りがある場合があります。お気づきの場合はコメント欄にてご指摘いただけると助かります。早急に訂正させていただきます。

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